2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15026
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 義晃 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (50511044)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | RNA結合タンパク質 / 転写後制御 / ハイスループットスクリーニング / 遺伝子ライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
FGF21およびPGC-1αの3’UTRをルシフェラーゼ遺伝子の3’UTRに挿入したレポーターを作製し、約1200個のRNA結合タンパク質 (RBP)遺伝子やジンクフィンガータンパク質などを含んだ、RBPライブラリーを用いて、ハイスループットスクリーニングを行い、FGF21およびPGC-1αの発現を変化させる遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、FGF21およびPGC-1α両方のレポーター活性を低下させる遺伝子として、zinc finger型のRNA結合タンパク質であるRBP-1を同定した。 本遺伝子について、CRISPRを用いて本遺伝子のノックアウトマウスを作製した。RBP-1ノックアウトマウスは、問題なく発生し、出生後の体重についてもプレリミナリーデータであるが変化はなかった。しかし、RBP-1ノックアウトマウスを用いて高脂肪食負荷による肥満モデルを行った結果、RBP-1ノックアウトマウスの体重増加は、プレリミナリーデータであるが野生型と比べて少ないことが分かった。以上の結果から、このRBP-1がFGF21やPGC-1αの発現制御を介して代謝に関与している可能性が示された。 また当初の計画にはなかったが、転写後制御因子の標的遺伝子を同定する新しいシステムの開発に成功した。ルシフェラーゼ遺伝子の3’UTRに、約5000の全長cDNAを挿入したレポーターライブラリーを作製し、興味あるRBPやmiRNAなどとともに細胞へ導入することで、レポーター活性からそのターゲット遺伝子をスクリーニングするシステムである。これを用いてmiRNAの標的遺伝子の同定に成功し(Ito et al, PNAS 2017)、またRBPへ応用可能であることを検証している。 今後は、より詳細なノックアウトマウスの解析、およびレポーターライブラリーシステムなどによる分子メカニズムの解析を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ハイスループットスクリーニングによる代謝関連遺伝子を制御するRNA結合タンパク質のスクリーニングを行い、その結果より同定した遺伝子のノックアウトマウスの作製を終了させており、順調な進捗状況といえる。さらに、ノックアウトマウスの表現型解析から、代謝制御RNA結合タンパク質の候補遺伝子を既に同定しているほか、当初の計画にはなかったが、RBPやmiRNAなどの転写後制御因子の標的遺伝子を同定する新システムを構築し、PNASに発表している。
|
Strategy for Future Research Activity |
RBP-1ノックアウトマウスについて、より詳細な解析を行う。高脂肪食負荷による肥満モデルにおいて、皮下脂肪、内臓脂肪量の調査および組織学的解析を行う。また血中におけるサイトカインおよび、脂肪、筋肉、肝臓等における代謝関連遺伝子の発現について調査する。 また、in vitroの解析として、培養細胞を用いたノックダウンによるFGF21等の発現調査等の解析を行っていく。また、レポーターライブラリーシステムを用いたターゲット遺伝子のスクリーニングも実施し、標的遺伝子を同定し、その分子メカニズムについて明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初の予定になかった分子メカニズム解明のためのレポーターライブラリーシステムによる標的遺伝子スクリーニング法の開発を入れたため、当初計画されていた、培養細胞を用いた解析を後回しにしたため、培養消耗品および発現解析消耗品分を次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
RBP-1ノックアウトマウスの解析により、脂肪、筋肉、肝臓でのFGF21およびPGC1-αの発現について調査し、発現が変動している組織の細胞を中心に解析する。各組織の培養細胞でのノックダウンを行い、FGF21およびPGC1-αの発現について調査する。また、PGC-1αの発現を変動させるものについて、下流遺伝子のUCP-1などの褐色脂肪マーカーの発現についてリアルタイムPCR、ウェスタンプロット、ELISA、免疫染色などによる発現調査を行う。
|