2015 Fiscal Year Research-status Report
動的平衡状態にある膜蛋白複合体を生理的条件下で直接観察するための技術基盤の開発
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15K15035
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
相馬 義郎 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (60268183)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子間相互作用 / 高速原子間力顕微鏡 / 1分子直接観察 / 膜蛋白複合体 / 脂質2重膜 / ラフト / 抗原ー抗体反応 / アクアポリン |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ)細胞膜環境AFMプラットフォームの作成 AFMステージのマイカの物性による影響を最小限にとどめて、膜蛋白が本来の動態を示すようにマイカ表面と脂質2重膜の間に潅流液の層を作るために、直鎖構造PEG 脂質誘導体を添加したリポソームを作製して、AFMステージ上への展開に成功した。現在、このPEG脂質誘導体脂質2重膜に水チャネルAQP4を組み込んで、膜蛋白の側方拡散の直接観察と拡散定数の決定に挑戦している。
Ⅱ)高速AFM観察データの解析理論の確立 本研究では、膜蛋白複合体中の各膜蛋白の動態および相対的位置変化の直接観察技術の開発用のモデルとしてAQP4と抗AQP4抗体の結合・解離の系を用いている。膜蛋白分子間相互作用についての1分子動画データの解析技術を確立するために、巨視的レベルでのAQP4に対する抗AQP4抗体の結合・解離動態を調べるために、ELISAを用いたAQP4安定発現CHO細胞に対する抗AQP抗体の結合量測定を行なった。その結果、抗体結合プロセスについては、溶液中抗体濃度に依存した2次蛍光抗体のELISAシグナル強度の時間依存性増加についての定量的データが得られた。抗体解離プロセスについては、溶液中の非標識抗AQP4抗体の濃度依存的に増速するELISAシグナル強度の指数関数的減衰が観察された。このことは、AQP4結合中の抗体と溶液中を浮遊している抗体の間での同一抗原に対する競合的結合阻害作用の存在を示唆している。これは高速AFMで直接観察された、秒レベルの早い結合・解離現象や、長時間の抗体作用後に抗体がAQP4アレイ上で動きながらもアレイ上に留まっている状態とよく整合している。 現在、ELISA実験データと高速AFMデータを定量的に整合・説明できる解析モデルの作成に挑戦している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、直鎖構造PEG 脂質誘導体を添加したリポソームを作製し、AFMステージ上への展開に成功した。 さらに、リポソームに組み込んだAQP4とそれに対する抗AQP4抗体の結合・解離の系をモデルとして用いることにより、高速AFMによる1分子レベルでの抗原・抗体反応の動画データとELISAを用いた巨視的レベルでの抗原抗体反応データとの整合性の確認を行った。これは、今後、高速AFMによる1分子動画データを用いた膜蛋白分子間相互作用についての研究を進めるにあたり、その実行可能性および信頼性についての非常に重要なエビデンスであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
直鎖構造PEG脂質誘導体を添加したリポソームに、水チャネルAQP4の2つのisoform、脂質2重膜中に単独で分散して存在するM1-AQP4および多数集合してアレイ構造を取ることが知られているM23-AQP4、をそれぞれ単独および適当な比率で混合して組み込んで、膜蛋白の側方拡散の直接観察と拡散定数の決定に挑戦する。そして、それらの側方拡散動態に対する直鎖構造PEG脂質誘導体の長さをおよび存在密度の影響を検討する予定である。 AQP4‐抗AQP4抗体の系を用いた高速AFMによる膜蛋白分子間相互作用研究システムのフィジビリティスタディについては、高速AFM1分子データとELISA巨視的データの整合性のコンピュータシミュレーションを用いたより詳細かつ定量的な評価を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に雇用した実験助手が勤務できない期間が発生し、人件費が当初の計画より少額になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、新たに実験助手を雇用してその人件費に充てる計画である。
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Research Products
(9 results)