2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15040
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
早坂 直人 近畿大学, 医学部, 助教 (80368290)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 制限給餌性リズム / 食餌時計 / 骨髄 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
概日時計とは独立して、食餌時間に行動を同調させる時計(食餌同調性時計、FEO)の存在が示唆されている。最近我々は、絶食時に骨髄由来細胞が視床下部へ移行し食欲調節因子を産生することを見出し、骨髄-脳ネットワークが形成する新規の摂食制御機構が、飢餓回避のために作動する可能性を示した。以上の背景から、本研究では、局在や駆動機序が未解明であるFEOを題材とし、「FEOは骨髄-脳ネットワークで構成され、飢餓時に細胞移動と調節因子の分泌を介して、食欲、摂食行動をフィードバック制御する」との仮説を検証する。そして、「2つの時計」の摂食リズム制御を介した代謝恒常性維持の仕組みに迫ることを目的とした。平成27年度は以下の2つの実験を計画した。 ①異なる食餌条件下における骨髄、室傍核ミクログリア、室傍核の概日リズム解析 この計画を実施する上で有効な実験法として、鉄粒子(ナノパーティクル)をミクログリアに取り込ませ、MRIを用いてミクログリアの脳内ダイナミクスを可視化することを試みた。その結果、自由摂食下と比較して、飢餓状態では脳内における鉄粒子の数が有意に上昇していることを見出した。これは、絶食下で骨髄からミクログリアが脳内に誘導されるという我々の以前の観察と矛盾しない結果であった。ただし、鉄粒子を取り込む細胞はミクログリアに限定されないため、ミクログリアの脳内への移動を証明したとはまだ言えない。そこで、現在、脳内で鉄粒子を取り込んだ細胞を同定すべく、ミクログリアマーカー等を用いて形態学的な解析を実施し、細胞種の特定を試みている。 ② 骨髄破壊マウス、骨髄移植マウス等を用いた、制限給餌性リズム解析 当該計画に関しては、以下の進捗状況の項でも述べたように、研究環境の大きな変化があり、実験動物の移動、実験設備等が当初の予定を大幅に遅らせる結果となった。現在遅れを取り戻すべく、実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該の研究計画を申請した平成26年度時点と、採択された平成27年度では、所属研究機関の変更に伴う研究環境の大きな変化があった。動物実験施設を含む実験関連の設備に劇的な違いがあったと同時に、実験動物の移動に半年以上の期間を要するなど、計画した研究を実施する上で、複数の実質的な制限があり、当初の計画通りに研究を実施することが難しい状況となった。また、連携研究者、研究補助員、大学院生など、人的な研究実施体制の変化もあって、以前の計画通りに研究を遂行することは非常に困難であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の項で挙げた2つの研究計画の遂行は元より、次に述べる3つ目の研究計画を実施し、代表者らが設定した仮説の検証と、制限給餌性リズム制御機構の実態解明を目指す。 ③室傍核で発現するケモカインKOマウスの制限給餌性リズム解析 室傍核は、視床下部で弓状核からの促進性、抑制性の神経投射や弧束核への投射などが知られており、食欲と摂食行動制御への関与が示唆される。また、食欲調節に関わるBDNF受容体TrkBが発現することが知られているが、室傍核に作用するBDNFの由来は明らかではなかった。絶食時に骨髄からミクログリアが室傍核に移動し、BDNFの産生を介して食欲や摂食行動を調節するという我々の結果には合理性があるが、室傍核がFEOの時間記憶や時刻依存的な食欲、行動の制御に関与するかどうかについては報告がない。そこで、細胞の化学走性を制御する分子の中で、骨髄由来細胞で受容体発現の報告があり、かつ絶食時に発現の劇的な亢進を見出したケモカインCXCL2に注目する。絶食時に室傍核でこのケモカインの発現が誘導され、CXCL2受容体(CXCR2)の発現が報告されている骨髄由来細胞が室傍核内に移動(浸潤)する可能性が考えられる。また、絶食下で制限給餌を実施した際に、給餌時刻前からFAAを出現させる時計機能(測時、時間記憶、時刻依存的行動誘発)が、室傍核にあると仮定した場合、CXCL2発現のタイミングを支配し、BDNF産生ミクログリアの時間特異的な移動を介在して食欲、摂食行動を調節しているかどうかを解析する必要がある。そこで、CXCL2 KOマウスを用いて制限給餌負荷実験を行い、FAAの消失、減弱といった異常が認められるかどうかを明らかにし、その場合に室傍核/ミクログリアのCXCL2/CXCR2の発現(リズム、位相)が変化するか、ミクログリアの局在変化に影響するか、などについて解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に、当初予定していなかった研究実施施設の変更(異動)があり、実験計画の一部が遂行できない事態が生じた。これに伴い、使用計画を次年度に変更することが必要となり、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初平成27年度に使用を計画していた分を、特に大きな変更なく平成28年度に使用することとする。
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Research Products
(3 results)