2015 Fiscal Year Research-status Report
成熟期社会性獲得に影響をおよぼす若年期優劣性交互関係の神経ネットワークメカニズム
Project/Area Number |
15K15041
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
多田 敬典 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 室長 (20464993)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 優劣性交互関係 / 若年期 / 内側前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、若年期の均衡した優劣性交互関係と成熟期社会性獲得の因果関係を神経ネットワークレベルから解明することを目的としている。 申請者は幼弱期の養育環境が若年期の優劣性交互関係の構築に影響を及ぼすことを、社会的優位性行動テストにより見つけ出した。当該年度は、若年期の優劣性交互関係構築の変動メカニズムを明らかにするために、内側前頭前野(medial prefrontal cortex; mPFC)での生化学解析、電気生理学的解析を行った。これまでに幼弱期の社会的隔離による低養育環境下で飼育されたラットのmPFCでは、シナプス部位においてアクチン線維脱重合因子Cofilinのリン酸化が亢進し、アクチン線維の流動性が低下していることを明らかにした。また社会的隔離ラットmPFCの2/3層の興奮性神経細胞では、AMPA型グルタミン酸受容体のシナプス膜表面の提示量が減少し、シナプス応答性が低下していた。社会的隔離によるmPFC2/3層興奮性神経細胞シナプス応答性の低下、アクチン線維流動性の低下はCofilinの恒常的活性化型であるS3Aを発現させることにより回復が見られた。さらにS3AのmPFCでの特異的な発現は、社会的隔離により均衡が崩れた若年期優劣性交互関係の構築を正常化させた。 今後は、本研究で得られた成果を発展させ若年期優劣性交互関係構築の変動と相関性の高いmPFC依存的な神経ネットワークを同定する予定である。さらに特定されるmPFC神経ネットワークでの神経活性操作により優劣性交互関係を制御し、成熟期社会性行動の解析を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、若年期mPFCを介した優劣性交互関係構築の分子メカニズムを明らかにしてきた。申請者は、幼弱期に社会的隔離されたラットが同腹子の正常ラットに対して、過剰な攻撃性を示し、若年期の優劣性交互関係が崩れることを発見した。同ラットのmPFCでは、アクチン線維脱重合因子Cofilinが不活性化し、スパイン内部でのアクチン線維流動性が低下していることを明らかにした。またAMPA型グルタミン酸受容体を介したシナプス応答性が低下していることを明らかにした。さらに申請者は社会的隔離されたラットmPFCでのCofilin活性操作により、若年期の優劣性交互関係を正常化することを示した。これらの結果より、CofilinのmPFCでの活性変化が若年期の優劣性を決定するのに重要であることが示唆された。 しかしながら、優劣性交互関係に影響を及ぼすmPFCと他脳部位間との神経ネットワークの同定は現在解析中であり、相関性の高い脳部位は得られていないため、当初の研究計画よりやや遅れている。今後は様々な優劣性行動課題を検討し、優劣性交互関係の構築に相関性の高いmPFC神経ネットワークを同定することを試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、若年期優劣性交互関係を制御するmPFCからの神経ネットワークを同定するために、社会的隔離ラットおよび同腹子の正常ラットの社会的優位性行動解析を行い、解析後(30,60,120,240分後)に神経活動依存的遺伝子c-fosもしくはArcの免疫組織学染色を行う。社会的隔離ラット及び正常ラットを用いて、mPFCからの投射先である扁桃体、線条体、手綱核、側坐核、海馬などの神経活性部位を比較検討する。また電気生理学的解析、生化学的解析、スパイン形態学的解析によるシナプス可塑性を調べることにより、優劣性交互関係の構築変動に対して相関性の高い脳部位を抽出する。 同定される神経回路での、DREADD法を用いた回路特異的な神経活性操作を行い、若年期優劣性交互関係の制御を試みる。さらに同動物を用いて成熟期での社会性行動解析を行い、若年期の優劣性交互関係と成熟期の社会性獲得の相関性を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた動物数より少数の動物の購入だったため、当該繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、若年期の優劣性交互関係に異常の生じたラットの成熟期社会性獲得を観察するため、飼育維持費に本研究費を使用する。また神経ネットワーク操作に必要なウィルス作成の消耗品購入を予定している。
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[Journal Article] Functional Neurons Generated from T Cell-Derived Induced Pluripotent Stem Cells for Neurological Disease Modeling.2016
Author(s)
Matsumoto T, Fujimori K, Andoh-Noda T, Ando T, Kuzumaki N, Toyoshima M, Tada H, Imaizumi K, Ishikawa M, Yamaguchi R, Isoda M, Zhou Z, Sato S, Kobayashi T, Ohtaka M, Nishimura K, Kurosawa H, Yoshikawa T, Takahashi T, Nakanishi M, Ohyama M, Hattori N, Akamatsu W, Okano H
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Journal Title
Stem cell reports
Volume: 6(3)
Pages: 422-435
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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