2015 Fiscal Year Research-status Report
双極性障害治療薬の開発を目指した新規動物モデルの作製
Project/Area Number |
15K15050
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
新田 淳美 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (20275093)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 嘉明 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20449101)
宇野 恭介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30608774)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 双極性障害 / Piccolo / in vivo マイクロダイアリシス法 / 光刺激反応実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
双極性障害は、躁と鬱の両方が病態として観察され、思春期の男女で発症する疾病である。今まで、モデル動物もなく、病因が明確でないことから、抜本的な治療薬もなかった。我々は、Piccoloという分子が、双極性障害に関係している可能性について培養細胞を使った実験で示している。そこで、本研究においては、双極性障害モデルマウスの作成に挑戦する。さまざまな行動実験を実施し、双極性障害患者の病態に迫るモデルを目指す。さらに、本モデルを用いて、双極性障害の原因を解明するために、最新の光刺激反応実験と、我々が今までに培ってきたin vivo マイクロダイアリシス法または多電極細胞外電位記録システムを組み合わせることで、脳のどの部位のどの細胞の異常によって双極性障害が発症するのかについて病因解明に挑んだ。 AAVベクターを用いて、Piccoloの発現量をマウス前頭前皮質で減少させたところ、多動やうつ様の症状が発現し、双極性障害様の症状を見出した。また、これらの症状は、臨床で使用されている向精神薬にて緩覚された。 また、in vivo マイクロダイアリシス法または多電極細胞外電位記録システムを用いて、解析を行ったところ、セロトニンおよびドパミン作動性神経の両方で障害があることが見出された。 in vivo マイクロダイアリシス法と光刺激反応実験を組み合わせた実験方法については、機器を導入し、新たなAAVベクターの作成を行い、実験条件の検討をしているところであり、次年度はデータの集積を目指すつもりである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Piccoloの発現量をマウス前頭前皮質で減少させたところ(miPiccoloマウスと呼称する) 対照となるMockマウスと比較して、前頭前皮質におけるPiccolo発現量が約50%にまで減少していた。行動薬理学的解析では、miPiccoloマウスにおいて、新奇環境下での自発的行動量の増大、聴覚性プレパルス抑制の減弱、そして物質および空間認知機能の低下が観察された。さらに、これらのmiPiccoloマウスにおける行動障害は、抗精神病薬の投与によって改善または回復傾向が観察された。また、in vivo マイクロダイアリシス法を用いた検討では、ドパミンやセロトニンの遊離量の減少が観察された。また、miPiccoloマウスの前頭前皮質においてシナプス小胞結合タンパク質のリン酸化レベルの変化が観察されたが、プレシナプス・マーカーSynaptophysin、ポストシナプス・マーカーNMDAR1、PSD-95の発現量には、変化が観察されなかった。また、野生型マウスへの非定型抗精神病薬連続投与では、PCLO mRNA 量が上昇した。 光刺激反応とin vivo マイクロダイアリシス法を組み合わせて、新知見を得るための予備的実験を開始した。27年度については、新たなAAVベクターの作成を行い、その機能を検討した。マウスを用いたin vivo マイクロダイアリシス法自体が熟練した高度なテクニックが必要であるところへ、新たに光刺激による神経回路検出テクニックを同時に実施していることから、データの蓄積に至る結果は得られていないのが現状である。次年度以降、実験条件の改良重ねていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス前頭頭皮質でPiccoloの発現量を減少させたところ、双極性障害様の症状が観察された。in vivo マイクロダイアリシス法を用いて、前頭前皮質をはじめ、線条体等のその他の脳部位においても、セロトニンやドパミンの遊離量の変化が観察された。この現象は、ヒトの患者脳で起こっていると考えられていることと同様である。 本モデルマウスでの神経伝達物質の遊離量の変化が脳部位ごとで異なることから、新たに作成したAAVベクターを用いて、光刺激反応の実験と組み合わせて、本モデルマウスでの神経回路の変化の検討を行う。 一方、これらの行動変化や神経伝達物質の遊離量の変化は、精神病薬で抑制され、マウスモデルとしての妥当性も証明された。その一方で、ノーマルのマウスへ精神病薬を連続投与したところ、PCLO mRNA 量が増加したことから、PCLOの発現増加メカニズムについても併せて検討したいと考えている。 また、該疾患の死後脳でのPiccolo mRNA量の測定も実施したいと考えている。海外の他の研究グループからの報告では、精神疾患の患者脳でPiccoloの発現量の減少・増加の両方の知見が論文発表されていること、また、精神病患者での一塩基置換による変異も統計的に有意な差があることが報告されていることから、それらの塩基の変異と27年度に見出したシナプス小胞結合タンパク質Synapsinのリン酸化レベルの変化との関連についても検討を重ねるつもりである。
|
Causes of Carryover |
実験の都合上、3月に発注をしたものが4月に納品されたことから、146,988円の差異が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画通り、実験を実施する。特に3月末に発注した抗体は4月早々に納品され、実験を円滑に継続的に実施することができた。
|
Research Products
(29 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Deletion of SHATI/NAT8L decreases the N-acetylaspartate content in the brain and induces behavioral deficits, which can be ameliorated by administering N-acetylaspartate.2015
Author(s)
Toriumi K, Mamiya T, Song Z, Honjo T, Watanabe H, Tanaka J, Kondo M, Mouri A, Kim HC, Nitta A, Fukushima T, Nabeshima T.
-
Journal Title
Eur Neuropsychopharmacol
Volume: 25
Pages: 2108-2117
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
[Journal Article] The Piccolo Intronic Single Nucleotide Polymorphism rs13438494 Regulates Dopamine and Serotonin Uptake and Shows Associations with Dependence-Like Behavior in Genomic Association Study.2015
Author(s)
Uno K, Nishizawa D, Seo S, Takayama K, Matsumura S, Sakai N, Ohi K, Nabeshima T, Hashimoto R, Ozaki N, Hasegawa J, Sato N, Tanioka F, Sugimura H, Fukuda KI, Higuchi S, Ujike H, Inada T, Iwata N, Sora I, Iyo M, Kondo N, Won MJ, Naruse N, Uehara-Aoyama K, Itokawa M, Yamada M, Ikeda K, Miyamoto Y, Nitta A
-
Journal Title
Curr Mol Med
Volume: 15
Pages: 265-274
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] Stability of octreotide acetate decreases in a sodium bisulfate concentration-dependent manner: compatibility study with morphine and metoclopramide injections.2015
Author(s)
Tanabe K, Wada J, Ohkubo J, Nitta A, Ikezaki T, Takeuchi M, Handa A, Tanaka M, Murakami N, Kashii T, Kitazawa H. Stability of octreotide acetate decreases in a sodium bisulfate concentration-dependent manner: compatibility study with morphine and metoclopramide injections
-
Journal Title
Eur J Hosp Pharm Sci Pract
Volume: 22
Pages: 171-175
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 精神疾患患者における末梢血中SHATI/NAT8LのDNAメチル化率の低下2015
Author(s)
田美奈, 宇野恭介 ,宮崎杜夫, 袖山健吾, 山森英長, 藤本美智子, 安田由華, 橋本亮太, 宮本嘉明, 鍋島俊隆, 武田雅俊, 新田淳美
Organizer
第45回日本神経精神薬理学会年会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-09-24 – 2015-09-26
-
-
-
-
-
-
[Book] 脳212016
Author(s)
新田淳美、宇野恭介、鍋島俊隆、宮本嘉明
Total Pages
92
Publisher
金芳堂
-
-