2015 Fiscal Year Research-status Report
褐色脂肪細胞の小胞体ストレス応答による生体エネルギー制御機構解明
Project/Area Number |
15K15067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今泉 和則 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (90332767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / 小胞体ストレス / センサー / UCP1 / BBF2H7 / IRE1 |
Outline of Annual Research Achievements |
体内に取り込まれたエネルギーを熱として放散し、エネルギー消費に寄与するのが褐色脂肪組織である。褐色脂肪細胞におけるエネルギー産生及び放散の仕組みが解明できれば糖尿病や心筋梗塞をはじめとした様々な代謝性疾患の要因である肥満に対する新たな治療戦略の構築につながる。本研究課題では、褐色脂肪細胞の分化・成熟および機能制御機構について、小胞体に収斂するシグナル経路を中心に解析し、生体におけるエネルギー出納の恒常性維持機構の解明を目指している。本年度は褐色脂肪細胞の熱産生機能における小胞体からのシグナルに関して検討した。当該細胞は、βアドレナリンなどで刺激するとミトコンドリア内膜に存在する脱共役タンパク質UCP1が転写レベルで誘導され熱を産生する。UCP1の転写亢進が小胞体ストレス応答シグナルのうち、IRE1-XBP1経路により制御されていることを見出した。さらにIRE1の活性化はprotein kinase A(PKA)が上流から調節しており、小胞体ストレスそのものがIRE1を活性化しているのではないことも明らかになった。以上から、βアドレナリンなどで活性化した褐色脂肪細胞では、βアドレナリン受容体を介してPKAを活性化し、PKAが直接ないしは間接的にIRE1をリン酸化することで下流のシグナルを誘導する。その結果、スプライシングフォームのXBP1mRNAから翻訳されたXBP1タンパク質がUCP1のプロモーターに作用しUCP1の転写が亢進する新たなメカニズムを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、1)褐色脂肪細胞の活性化メカニズム解明と、2)褐色脂肪細胞の分化誘導および機能亢進をもたらす小胞体ストレス応答シグナルの経路解明を目指した研究である。本年度は1)を完全に達成し論文として纏め上げることができた(Asada et al, Scientific Reports, 2015)。さらに2)に関しても褐色脂肪細胞の機能亢進に小胞体ストレスセンサーのIRE1経路が不可欠であることを明らかにしており、計画の一部をすでに達成している。従って、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体ストレスセンサーBBF2H7の遺伝子欠損マウスでは、褐色脂肪組織が異常に大きくなり、褐色脂肪細胞そのものも肥大化および細胞数の増加が生じている。従ってBBF2H7のシグナル経路は褐色脂肪細胞の分化や成熟に重要な働きがあることが予想される。今後はBBF2H7遺伝子を褐色脂肪細胞特異的に欠損させたコンディショナルノックアウトマウスを作成し、その分化・成熟のメカニズムを明らかにしていく。また、UCP1の転写誘導におけるBBF2H7の役割についても解析し、褐色脂肪細胞が熱産生細胞として機能していく上で本遺伝子がどのように制御しているのかも解明する。
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Research Products
(7 results)