2015 Fiscal Year Research-status Report
小胞体アミノペプチダーゼの双極性障害発症への関与-モデル動物としての評価・確立-
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15K15088
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
辻本 雅文 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00281668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 明 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50300893)
後藤 芳邦 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (90455345)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ERAP1 / ERAP1-/-マウス / 尾懸垂試験 / 強制水泳試験 / 高架式十字迷路試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまでにERAP1ノックアウトマウスを作製し、細胞レベルでERAP1の機能を検討してきた。その結果本酵素はウイルスや細菌の感染に際し、マクロファージの活性化や一酸化窒素の合成増加を介して、生体防御機構の一端を担いうることなどをあきらかにしてきた。その過程でERAP1ノックアウトマウスが精神疾患様の表現型を示すという予期せぬ現象を発見した。 本課題ではERAP1欠損マウスが示す表現型についてより詳細に検討を加えた。すなわち各種薬理学的試験をERAP1遺伝子のホモ欠損型(ERAP1-/-)、ヘテロ欠損型(ERAP1+/-)および野生型(ERAP1+/+)マウスで比較した。まず尾懸垂試験ではERAP1+/-マウスの無動時間はERAP1+/+マウスのそれと同程度を示したのに対し、ERAP1-/-マウスは20%程度の低下が認められた。一方強制水泳試験においては、ERAP1+/+マウスに比べ、ERAP1+/-マウスでは25%、ERAP1-/-マウスでは50%の無動時間の増加が観察された。以上の結果はERAP1遺伝子欠損マウスはストレス応答性や活動量の低下といった精神疾患様症状を呈することを示している。 次に遺伝子欠損マウスの不安レベルと社会性を高架式十字迷路試験と社会的相互作用試験を実施した。その結果、高架式十字迷路試験におけるERAP1-/-マウスERAP1-/-マウスのオープンアーム滞在時間はERAP1+/+マウスに比べ40%程度低下したことから欠損マウスは不安レベルを亢進させていることが示唆された。また欠損マウスの社会性をマウスを入れた檻と入れない檻への滞在時間の差で検討した結果、ERAP1-/-マウスのマウス部屋滞在時間はERAP1+/+マウスに比べて有意に低下していた。したがってERAP1-/-マウスは精神疾患様の表現型を示すという私たちの仮説は、より可能性が高いものと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度における検討で、ERAP1-/-マウスが精神疾患様表現型を示すという私たちの当初の仮説に沿う結果が得られている。今後の検討によりさらに仮説を強固にする結果が得られるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
精神疾患には脳内の神経伝達物質が重要な役割を果たしている。今後はそれらの動態についてERAP1+/+マウスとERAP1-/-マウスとを比較検討していく予定である。特に脳内におけるモノアミン(ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)の存在量、局在性について着目していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
計画が予想以上に順調に推移したため、確認に必要な出費を抑制することができた。次年度の計画に多少の経費が必要と思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は本課題の最終年度であるため、これまでの結果を確認するとともに、神経伝達物質の脳内動態に与えるERAP1の効果を検証していく。私たちにとってはこれまで経験のない実験内容であるため、予備的実験に多少経費がかかるものと予想される。
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Research Products
(2 results)