2015 Fiscal Year Research-status Report
IkBL分子機能に着目した新たな免疫・感染制御機序の解明とその応用
Project/Area Number |
15K15095
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
木村 彰方 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60161551)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子 / ウイルス / 感染症 / 免疫学 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
HLA領域には、T・B細胞が担う獲得免疫とNK細胞が担う自然免疫に関わる多数の遺伝子が存在し、免疫応答性や免疫疾患・感染症感受性の個体差を遺伝的に支配している。申請者らはHLA領域にある機能未知のIkBLが免疫関連遺伝子やウイルス遺伝子の選択的スプライシングを調節することを最近明らかにした。そこで、免疫関連細胞の活性化状況においてIkBLによるスプライシング制御を受けるターゲット遺伝子群を同定し、その制御機序を解明するとともに、得られた知見に基づいて免疫・炎症性疾患や難治性感染症への制御戦略を得ることを目的とした研究を実施し、以下の成果を得た。 ①IkBLを導入した細胞株と親株における網羅的RNA解析:T細胞株(JSL-1)、B細胞株(Raji)、上皮細胞株(HeLa)にそれぞれIkBL遺伝子を導入し、IkBL分子を安定に高発現する形質転換細胞を得た。また、T細胞株(JSL-1)では、形質転換細胞株と親株について、未刺激状態と活性化刺激(PMA刺激)後でのRNA発現パターンを次世代シーケンサ―を用いて網羅的に解析(RNA-Seq解析)し、多くの免疫関連遺伝子の発現量ならびにスプライシングパターンの変化を明らかにした。。 ②IkBL多型とHIV/AIDS感受性・抵抗性との関連解析:日本人およびインド人集団について、HIV感染患者、HIV感染後長期AIDS未発症患者、対照者の血液DNA試料と臨床情報をすでに収集している。本年度はインド人集団についてIkBLプロモーター多型を検討したところ、特定のIkBLプロモーターハプロタイプの頻度がHIV感染者集団で有意に増加していた。また、IkBLを高発現する上皮系細胞株およびT細胞株では、HIV導入後の培地中のp24量が大きく変化することから、IkBLはHIV感染感受性を制御するものと考えられた。 ③その他、HIV感染感受性に関わる種々の候補遺伝子多型を検討し、APOBEC3Hが日本人およびインド人集団におけるHIV感染制御およびAIDS発症制御に関わることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度計画にあげたCLK1のキナーゼ活性の有無とスプライシング制御の検討において、IkBLを安定に高発現する細胞株を樹立したが、TG003によるキナーゼ活性阻害によるスプライシング変化についての検証が行えなかった。一方で、IkBL高発現細胞株を用いた実験で、HIV導入後のp24産生量が低下することを見出すなどの進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は概ね順調に進んでおり、研究計画に沿った実験を実施するが、IkBLがいかなるメカニズムでHIV感染制御に関わるのかを、新たにIkBL高発現細胞株におけるHIVウイルス遺伝子のスプライシング変化の観点からも検討することとする。
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