2015 Fiscal Year Research-status Report
HER2シグナルの乳癌病理組織標本上における可視化の試み
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15K15097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笹野 公伸 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50187142)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳癌 / HER2 / CEACAM6 / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度ではHER2陽性乳癌でのCEACAM6の発現意義について検討した。先ずはじめに、HER2陽性の乳癌培養細胞株BT-474及びMDA-MB-361を用い、HER2阻害剤Herceptinの感受性を検討した。Herceptinに対してBT-474は高い感受性を示し、一方でMDA-MB-361のHerceptinの感受性は低かった。さらにこの両細胞を用いて免疫細胞化学にてCEACAM6の発現を検討した。さらに2つのタンパクの結合性を評価することができる近接ライゲーションアッセイ法(PLA)た。免疫細胞化学の結果ではCEACAM6はBT-474及びMDA-MB-361ともに同程度の発現が認められた。一方、近接ライゲーションアッセイ法ではBT-474のみで陽性像が認められた。このことは、CEACAM6及びHER2の発現量と両タンパクの結合性には関連性が無いことを意味する。また、BT-474細胞では共免疫沈降法にて、HER2とCEACAM6のタンパク結合を確認することができた。以上のことから、Herceptinの感受性にはCEACAM6のHER2への結合性が関与していると考えられた。この結果を病理組織標本で検討するために、乳癌10例でのパイロット試験を行った。結果、ヒト組織を用いた解析においても、CEACAM6発現を免疫組織化学にて確認することができた。同様に現在、PLAによるCEACAM6及びHER2の結合について実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画時ではHER2/ CEACAM6共陽性の乳癌培養細胞の選定に時間を要すると考えられた。また、HER2阻害剤Herceptinの感受性の異なる株を用意する必要もあった。これらの課題に対し、当分野で所有する複数の細胞株を検討することで速やかに克服することができ、本課題に必須なin vitro実験系を確保することができた。また、結果も想定していた結果を得ることができ、次年度以降に検討する病理組織標本解析の妥当性を示すことができた。さらに次年度に実施する病理標本を用いた免疫組織化学の条件設定(抗体の選定、染色条件)もすでに済ませており、速やかに次年度の検討を開始する準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の乳癌病理組織を用いてHER2陽性乳癌におけるCEACAM6の発現意義を検討する。 その課題を達成するために、HER2陽性乳癌症例の確保(100例を予定)が必要である。また、CEACAM6の乳癌におけるインパクトを同様に検討する必要もあるため、免疫組織化学における検討を行い、HER2との相関だけではなく、予後などの病態に対する意義を明らかにする。さらにHER2阻害剤Herceptinの術前投与症例を対象に、CEACAM6の発現を同様に免疫組織化学にて検討し、Herceptinの奏功性にCEACAM6が及ぼす影響を明らかにしたい。培養細胞での検討ではCEACAM6陽性/HER2陰性株を選定し、HER2過剰発現系を作成して両タンパクの結合の有無を確認する。
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