2015 Fiscal Year Research-status Report
希少糖溶液をハマダラカに吸わせて原虫発育を抑制する、新規マラリア伝播阻止法の開発
Project/Area Number |
15K15123
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
新井 明治 香川大学, 医学部, 准教授 (30294432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 誠 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50326849)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マラリア伝播阻止 / 希少糖 / ハマダラカ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ローデントマラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA株)の生殖母体をアルカリ培地で活性化して鞭毛放出を誘導する実験系を用いて、蚊体内発育ステージの最初の段階である生殖体形成に対するD-アロースの効果を検討した。P. berghei感染マウスの尾から微量の血液を採取し、鞭毛放出誘導培地(RPMI-1640 with 10% FBS, pH 8)で希釈して鞭毛放出をカウントする実験を行い、D-アロースの鞭毛放出に対する影響を調べた。終濃度10 mMである程度の鞭毛放出阻害活性がみられるものと予測していたが、コントロール(D-フルクトース添加)と比較して有意な差異が認められなかった。このことから、D-アロースの伝播阻止活性は、生殖体形成より以後のステージで発揮されることが明らかとなった。 2)D-アロースの伝播阻止活性の作用機序に関して、マラリア原虫の糖代謝を阻害している可能性を考えた。そこでまずP. berghei のヘキソーストランスポーター(PbHT1)遺伝子をクローニングし、pET大腸菌発現系での発現実験を試みたところ、タンパク発現が認められなかった。次にコムギ胚芽発現系を用いて発現実験を行った結果、ウェスタンブロットでPbHT1の発現を確認することができた。平成28年度は組換えPbHT1をリポソーム膜に発現させ、in vitroでPbHT1のトランスポーター活性を評価する実験系を構築する。この実験系においてD-アロースがPbHT1のトランスポーター活性を阻害する効果が認められれば、D-アロースのマラリア伝播阻止活性の作用機序を示す証拠が得られることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画ではD-アロース存在下でのマラリア原虫およびハマダラカにおけるトランスクリプトーム解析を行う予定であったが、D-アロースの作用標的がマラリア原虫のヘキソーストランスポーターである可能性が浮上したため、その検証のために実験計画を変更することとなった。組換えPbHT1の発現に成功したことから、平成28年度には組換えHbHT1封入リポソームの作製を目指す。in vitroでのPbHT1活性評価実験によってD-アロースの標的分子がPbHT1であることが証明できれば、本研究は大きく前進することとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)D-アロースによる伝播阻止効果のステージ特異性を明らかにするために、in vitroでのオオシスト培養系での検証実験を行う。もしもD-アロース添加によって培養オオシストの発育に影響が認められない場合、D-アロースの作用点は媒介蚊の生体成分と原虫との相互作用にあると推定され、マイクロインジェクション実験系へと移行する予定である。 2)組換えPbHT1の実験系を用いて、同トランスポーターに対する各種糖分子の挙動を解析し、D-アロースをはじめとする各種希少糖のトランスポーター活性に対する阻害効果の有無・程度を解析する。
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Causes of Carryover |
平成27年度末に実施予定であった実験を28年度に延期せざるを得なくなったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
リポソーム作製装置(Avanti社Mini-Extruder)を用いて組換えPbHT1を発現したリポソームを作製するために、Avanti社製のリポソーム作製装置(Mini-Extruder)および関連試薬の購入にあてるほか、in vitroでのオオシスト培養実験に必要な物品(液体培地、血清、添加物、実験動物、窒素ガス)として使用する。
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