2015 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫の転写因子群強制発現による原虫発育期強制転換の可能性
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15K15127
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
安田 加奈子 (駒木加奈子) 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 熱帯医学・マラリア研究部, マラリア学研究室長 (50415551)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マラリア / 熱帯熱マラリア原虫 / 転写因子 / スポロゾイト / ガメトサイト / 初期化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、哺乳類細胞では未分化細胞に特徴的な転写因子のセットを導入することで、細胞が「初期化」され「全能性」を得ることにヒントを得、マラリア原虫における「脱分化」「初期化」とは、その形態の変化の運命(スポロゾイト→肝内型→赤血球内寄生サイクル→ガメトサイト→ガメート→ザイゴート→オーキネート→オーシスト→スポロゾイト)から自由になり、自在に形態を変えられることではないか、との着想に至った。そこで、培養原虫(赤血球内寄生サイクル)にガメトサイトで働く転写因子のセットを強制発現させて高効率でガメトサイトを作成することを目指す。同時に、究極的な目標として、スポロゾイトで働く転写因子を赤血球内寄生サイクルの培養原虫に強制発現させ、スポロゾイトへの形態変化を起こすことを試みる。平成27年度は、スポロゾイトで働く転写因子を赤血球内寄生サイクルの培養原虫に発現させるためのプラスミドを構築し、培養熱帯熱マラリア原虫に導入した。今後、導入したプラスミドからスポロゾイトで働く転写因子の強制発現をonにした時にどのような表現型が見られるか、また、遺伝子の転写の変化が起きるかを解析することで、原虫の「初期化」「脱分化」がどのレベルで起こるのかを観察することができると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画では、ガメトサイト期特異的、スポロゾイト期特異的に働く転写因子について「過剰発現のタイミングを調節できる株」を樹立する為のプラスミドを作成し、マラリア原虫に導入する予定であった。この目的の為にClontech社のProteoTuner™ Shield システムを利用し、転写因子時期特異的過剰発現株作成用プラスミドの構築を試みた。ガメトサイト期特異的な転写因子としてAP2-G、 AP2-G2スポロゾイト期特異的な転写因子としてAP2-Spを想定している。AP2-Spの過剰発現用のプラスミドに関しては構築が終了し、原虫に導入したので今後、表現型を観測することができると考える。AP2-Gの過剰発現用のプラスミドは、遺伝子のサイズが大きく(7 kbp)また、AT-リッチであるために、マラリア原虫用の過剰発現ベクターpHC1への導入を試みたが大腸菌を利用したプラスミド構築ではプラスミドが得られていない。AP2-G2に関してはcoding regionをマラリア原虫のゲノムからPCRで増幅し、プラスミドにサブクローニングし、シーケンス解析したところ、異なる遺伝子配列が複数種類得られ、その中にはフレームシフトを起こしているものも認められたため、この遺伝子が遺伝子多型を持ち、変異のホットスポットである可能性が示された。この変異は原虫株によるガメトサイト形成効率の差異に関わっている可能性が考えられた。この様にAP2-Spについては順調に進展しているが、AP2-GおよびAP2-G2については予想外の展開が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
AP2-Gの過剰発現用プラスミドについては、今後、別の種類のマラリア原虫過剰発現用プラスミドベクターの使用、または、過剰発現する遺伝子の転写因子活性化ドメインを残して短く削ったものを発現させる、などの改善を試み、次年度中にはマラリア原虫での過剰発現を目指す。 AP-2G2についてはこの遺伝子がフレームシフトを含む変異のホットスポットである可能性が示唆された。これを確認するために実験室マラリア原虫株の培養を限界希釈しクローン化した後に、個々のクローンからAP-2G遺伝子をPCRによって増幅し、遺伝子配列をシーケンス解析する。この実験によってAP-2G2遺伝子がフレームシフトを起こす様な遺伝子多型を持っていることを確認できる。この結果から原虫の株間によってガメトサイト形成能が大きく異なることを分子生物学的に説明出来る可能性がある。また、フレームシフトを起こしていないAP2-G2を持つ株が得られれば、その遺伝子をクローニングして過剰発現させることができる。また、AP2-G2の変異をもつクローンと持たないクローン間でガメトサイト形成能を比較することによって、AP2-G2がガメトサイト形成効率への寄与を解析できる。 AP2-Spの過剰発現株については、今後、強制発現のスイッチをonにした時にどのような形態の変化、遺伝子発現の変化(マイクロアレイによる網羅的観測)、タンパク発現の変化(スポロゾイト表面抗原の有無をウエスタンブロット、間接蛍光抗体法によって観測)が起こるのかを観測できると考えている。
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Research Products
(7 results)