2015 Fiscal Year Research-status Report
梅毒トレポネーマのゲノム情報基盤の構築と分子型別法の開発
Project/Area Number |
15K15137
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
大西 真 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (10233214)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 梅毒トレポネーマ / ゲノム配列 / DNA型別 |
Outline of Annual Research Achievements |
63例の梅毒疑い患者の皮膚潰瘍病変のスワブを採取した。スワブをTE溶液に懸濁後、その一部を用いてT. pallidum特異的遺伝子polAおよびTpN47をPCR法で増幅することで、T. pallidum DNA陽性32検体を得た。 そのうち、T. pallidumの多型遺伝子 arp, tpr, Tp0548を標的とした型別法を実施し、型別可能であった検体が21存在した。残りの11検体は、標的部位のPCR増幅が不能であった。つまり、DNA断片化、あるいはDNA量が少ないことを意味することと解釈可能であり、ゲノム解析にも利用不能であった。もっとも高頻度であることが示されたのは、14d/f型(12/21)であった。このうち1検体についてはIllumina MiSeqにより、T. pallidumゲノム配列の取得を試みたがT. pallidumゲノム配列はごく少数であり、ヒトDNA量と比して、ごく少数であることが示唆された。 本課題を遂行するために、T. pallidumニコルス株ゲノム配列情報から150 bp毎(75 bp重複)を作成することでSureSelect(Agilent)カスタムキャプチャライブラリを作成した。 効率的に計画を実施するために菌数の多い検体を選択し、キャプチャライブラリを供することが重要である。そこで、そのような多菌体検体を選択するために、感染研に保存するニコルス株のゲノムDNAを調整し、既知量DNAを用いた定量的PCR法を確立することで、T. pallidum DNAの定量法を構築した。T. pallidumに対する市販抗体とプロテインA結合磁気ビーズにより菌体を回収する系の開発を試みたが、現状では満足する結果が得られなかった。 ウサギ(睾丸接種)T. pallidum 培養法をもちいた菌体取得とゲノム配列決定を実施する予定であったが、十分な菌体量を示す検体を得ることができなかったため、今年度は実施しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検体の取得、DNA型別の実施、その結果の蓄積、T. pallidum特異的SureSelect(Agilent)カスタムキャプチャライブラリの作成に関しては予定どおり進捗している。一方、抗体を用いた梅毒トレポネーマ濃縮法について、十分な選択的回収ができず、方法の確立にいたっていない。結合バッファーおよび持ちいる抗体の検討を実施する予定である。十分な菌体量もつ検体をえることができなかったため、カスタムキャプチャライブラリを用いた配列決定および動物を用いたT. pallidum増殖とそれに続くゲノム配列決定は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き検体収集を実施し、H27年度から蓄積した検体を含めてもっとも菌体量(DNA量)が多いサンプルを用いて、T. pallidum特異的SureSelect(Agilent)カスタムキャプチャライブラリにアプライしT. pallidumゲノム配列情報を取得する。また、H28年度前半において、ウサギ睾丸接種法により臨床分離株の確立を目指す。動物愛護の観点からも重要であるウサギを用いないT. pallidum菌体増殖が可能な代替法を検討する。世代時間が長い、つまり増殖が遅いことを考慮すると実現可能性は低いと考えるが、カイコ接種による増殖法も検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験計画のうち、ゲノム配列決定に適切な検体が得られなかったため配列決定を見合わせた。そのため、費用の一部を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を合わせてH28年度において、ゲノム配列決定のために使用する。
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