2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15143
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂口 剛正 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70196070)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | センダイウイルス / C蛋白質 / アクセサリー蛋白質 / STAT3 / シグナル伝達 / 癌治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍細胞で持続的に活性化されている転写因子STAT3を阻害するセンダイウイルスを作製し、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するという「治療」をおこなうことを目的とする。 最近我々が明らかにしたC蛋白質とSTAT1の立体構造をもとに、C蛋白質とSTAT3の結合様式をソフトウェアAmberを用いて予測した。これをもとに、STAT3との結合に関わると予測されるアミノ酸残基に部位特異的変異を導入し、STAT3と結合しないと考えられるC蛋白質 C-3Q(C-E153Q, R157Q, K183Q)および C-3QL(C-Q146L, E153Q, R157Q, K183Q)を作製した。しかし実際に結合実験を行うと、いずれもSTAT3とは結合しなかった。また、STAT1との結合能は保持していた。 これで当初の計画が頓挫したが、蛋白質構造と進化の専門家である中野祥吾先生(静岡県立大学、CRESTなど)に予想を依頼し、STAT1との結合を弱め、STAT3との結合を強めると予測される6箇所のアミノ酸変異を示唆された。(R140E, Q146I, I143T さらに K135Q, T158V, K183Q)現在、その変異のすべてをもつC蛋白質を作製したところであり、STAT3との結合およびSTAT3によるシグナル伝達阻害を検討する予定である。 今後は蛋白質レベルでSTAT3との結合と機能阻害を検討したうえで、STAT3依存腫瘍細胞に対する効果を調べるとともに、これをもつセンダイウイルスを作製する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々はセンダイウイルスC蛋白質と転写因子STAT1との結合複合体の立体構造を明らかにした。これをもとにしてC蛋白質とSTAT3の結合モデルを構築するというのが研究の開始点であった。STATファミリーでは、STAT3はSTAT1にもっとも近縁であり、このことは通常のソフトウェアを用いれば容易であると考えていた。しかし、実際に計算で得られたアミノ酸変異を4箇所同時に導入しても、STAT3と結合するC蛋白質を得ることができなかった。そこで、蛋白質構造予測の専門家に依頼し、予測をお願いした。STAT3結合を促進し、STAT1とは結合しなくなると思われる変異C蛋白質を作るために、6箇所の変異を提案され、それらをもつC蛋白質を構築したところである。このような事情で計画が遅れている。一方で、すでに実験に必要なプラスミドの作製などの準備をしており、この変異体で予想通りの結合が見られれば、研究は迅速に進められると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作製した変異C蛋白質とSTAT3との結合と、STAT3シグナル伝達機能阻害を検討する。さらにSTAT3依存腫瘍細胞に対する効果を調べる。このときには、STAT3ドミナントネガティブ変異体を対照として用いる。さらに変異C蛋白質をもつセンダイウイルスを作製し、その増殖等を検討し、STAT3依存的腫瘍に対する効果を検討する。この場合には、培養細胞レベルだけではなく、腫瘍細胞を接種したマウスでの動物実験を行う。
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Causes of Carryover |
研究がやや遅れている理由として述べたように、予定の実験を行っていないので結果的に予算を予定通りに消化できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はSTAT3と結合してその機能を阻害するC蛋白質が得られる見込みであり、そののちに培養細胞および動物を使用して実験を行う計画を立てている。
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