2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15149
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤 新一郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (80611756)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / RORgt / LTi前駆細胞 / リンパ節形成 / RANK |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はマウス自然リンパ球のなかで特にRORgt陽性自然リンパ球(ILC3)に注目し、その前駆細胞同定と、最終分化に必要な分子群の同定を試みた。 ILC3のなかでLymphoid Tissue inducer (LTi)細胞はリンパ節形成に必要なリンパ球である。胎生14.5-18.5のマウス胎仔リンパ節原基にはc-kit陽性 IL-7Ra陽性 RORgt陽性のLTi細胞が集簇している。また、胎仔肝臓細胞中にもIL-7Ra+ RORgt+細胞が存在している。胎仔肝臓およびリンパ節原基に存在するDNAマイクロアレイ解析を行った結果、胎仔肝臓中のRORgt陽性細胞はLymphptoxin (LT)-alphaをはじめとするリンパ節形成に必須のTNFファミリーサイトカインの発現が著しく低値であることが分かった。胎児肝臓中のRORgt+細胞はLTi細胞の直接的な前駆細胞と考えられ、肝臓から末梢リンパ節原基へと遊走する過程で最終的に成熟したLTi細胞へと分化する分子機構が存在すると考えられた。 RANKLの受容体、RANKは胎仔肝臓中のLTi前駆細胞に強発現している。RANK欠損マウスではLTi前駆細胞の分化は正常であるが、リンパ節原基への集簇が障害され、リンパ節は完全に欠損する。RANKLはリンパ節原基に存在する間葉系ストロマ細胞に発現しており、間葉系細胞特異的なRANKL欠損によりリンパ節形成は完全に欠損する。以上から、LTi細胞最終分化にはリンパ節局所のRANKL-RANKシグナルが重要な役割を果たすことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然リンパ球のうちLTi細胞に焦点を絞り、研究費を集中させることでLTi前駆細胞同定に必要な網羅的解析を行う事ができた。また、従来からリンパ節形成における重要性が報告されていたにも関わらず、その機能的意義が不明瞭であったRANK発現をLTi前駆細胞上に確認し、末梢組織における最終分化と関連づけることができた点は研究遂行上大きな進展といえる。 従来の計画では自然リンパ球前駆細胞の網羅的解析を行う予定であったが、一細胞レベルの前駆細胞同定が他の研究グループで進められたため(Ishizuka et al, Nat Immunology, 2016)、網羅的解析の意義が少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
末梢リンパ組織におけるRANKLシグナルがLTi細胞の分化をどのように制御するか、多階層的に解析する。分子レベルでは、RANKL刺激により、LTi前駆細胞がどのようなエフェクター分子の発現を上昇させるか、RNAseqによる網羅的解析を行う。また、細胞レベルではリンパ節原基内におけるRANKL発現細胞の同定をすすめる。さらに、RANKL-RANKシグナルが臓器形成に必須でないリンパ組織として知られるパイエル板では、リンパ節とは異なるLTi細胞分化機構が存在すると考えられ、その分子機構の解明を行う。
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