2016 Fiscal Year Research-status Report
新規網羅的配列解析手法を用いた抗体レパトア総体の明示と逆遺伝学的抗体分子発現
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15K15159
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
大西 和夫 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (90169011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤 博幸 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70192656)
野口 保 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (00357740)
藤本 浩文 国立感染症研究所, 品質保証・管理部, 主任研究官 (60373396)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗体レパトア全体像 / 抗体レパトア発生機構 / 自己抗原反応レパトア / 抗原応答抗体予測 / 抗体遺伝子合成 / 抗原抗体反応測定 / VDJ遺伝子再構成制御 / 次世代シークエンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が独自に開発した次世代シークエンサによる抗体レパトア網羅的解析手法を用いて以下の成果を得た。今年度は、次世代シークエンサ機種をIllumina_MiSeqシステムに更新し、解析プロトコールもさらに改良した。 1)抗体VDJ領域レパトアの網羅的配列解析:骨髄におけるVDJ配列の発生と末梢(脾臓)におけるVDJレパトア構成の成立過程を解析した。骨髄におけるVDJ再構成のマウス個体間の相関性を検討した結果、高度な類似性を示したことから、骨髄における抗体レパトア発生がランダムなものではなく、ある決定論的なメカニズムにより進行することを示した。 2)ノンランダムVDJレパトア発生機序の解析:プレB細胞受容体を形成しない代替軽鎖遺伝子欠損マウスの複数個体の骨髄および脾臓(末梢)の抗体レパトアは、野生型のレパトアとは異なるノンランダムなパターンに収束した。このことは、野生型の抗体レパトア構成にプレB受容体が関与していること、しかし、プレB細胞受容体がなくても各個体が独立に同じVDJレパトア・パターンに収束することを示している。レパトア・パターンを収束させる因子が、遺伝子(抗体遺伝子座)制御であるのか、自己抗原反応抑制であるのかを今後検討する必要がある。 3)抗原応答抗体レパトア・パターン全体像の解析:NP-CGG抗原の免疫による末梢VDJ応答パタンの全体像を把握した。複数個体のマウスで応答抗体のパターンを比較し、応答レパトアの共通成分を抽出する新規統計解析手法を確立した。この手法によって検出したVDJ配列を人工遺伝子合成し、抗原との反応性をELISA法で測定し、レパトア全体像から応答抗体レパトアを検出する手法の有用性を確認した。この結果は、学術誌に論文発表した。 4)B細胞亜群VDJレパトアの解析:末梢B細胞をソーティングして各B細胞亜群の特徴的レパトア・パターンについて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況: 計画した実験内容について、概ね順調に研究が進んでいる。得られた研究結果の一部(NGSを用いた網羅的VDJレパトア解析手法の開発、抗原応答レパトアを検出する新規統計手法の確立、この手法により予測された抗体遺伝子の人工合成とその発現による抗原結合性の測定)について論文をまとめ、学術誌に発表した(論文受理は年度をまたいで平成29年5月となった)。未発表部分の研究結果(骨髄におけるレパトア形成機構とプレB細胞レセプターの役割、各B細胞亜群のレパトア特性の解析)について論文を作成しており、学術誌に投稿する準備を進めている。本研究で確立した方法を、ヒトの抗体レパトア解析に応用して実用化し、感染症対策に役立てるための研究を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)本研究で得られた研究成果の発表として、第2報の論文発表を行う。 2)本研究で確立した、網羅的VDJレパトア解析手法、抗原応答レパトアを検出する新規統計手法、抗原応答抗体レパトア遺伝子の人工合成と発現による抗原結合性の解析手法、についてヒト抗体レパトア解析手法への移行を急ぎ、感染症対策に実用化できるよう研究を推進する。
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Causes of Carryover |
本研究で得られた研究結果の一部について論文をまとめ、学術誌に平成29年2月に投稿したが、論文受理は年度をまたいで平成29年5月となってしまった。未発表部分の研究結果についても引き続き論文を作成しており、学術誌に投稿する準備を進めている。また、論文作成のために、これまでの実験結果について少しの補完を行う必要があった。これらの事情により、研究期間の延長を行なった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の投稿費用と英文添削の費用、少量の補完実験のために研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)