2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K15162
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富田 博秋 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (90295064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 倫理 / 災害科学 / 被災地 / 心的外傷 / 説明同意 / 倫理委員会 / 災害救援 / 倫理指針 |
Outline of Annual Research Achievements |
被災者対象の倫理に関する論文・報告書などの文献のレビューと災害調査の倫理に関わる研究者間の検討によって問題整理を行い、被災地域を対象とする被災地調査の倫理的側面に関する実態調査で尋ねる質問項目を策定した。宮城県沿岸部の全市町について、被災自治体で調査の窓口となった職員を対象に、協力もしくは断った調査、あるいは、聞き及んでいる被災者(職員を含む)を対象とした調査に関して、調査の時期、調査内容、協力の内容、事前説明・情報還元のあり方、倫理審査、インフォームド・コンセントの有無、被験者、自治体職員への負担、利益、不利益に関する聞き取り調査を行った。自治体職員が把握している調査の多くは、倫理審査を経て、自治体職員への事前説明、被験者からのインフォームド・コンセントの取得を経て行われ、調査からの情報還元もなされており、自治体職員、被験者への負担の配慮もなされている一方、十分把握できないところで多くの調査研究がなされているという認識を多くの職員が得ており、これらの調査の倫理面の配慮の実態が不確かであり、また、把握が困難であることが認識された。一方、医学系の調査研究に関しては、倫理審査の体制、基準が比較的一定であるが、その他の研究領域の倫理審査の体制、基準が定まっていないこと、さらに、学術機関以外の団体が調査を行うケースも多くあり、このような調査研究の実態を把握し、また、倫理的配慮に関する知識を普及する必要性、及び、倫理的配慮を欠く調査から被災者が不利益を被らないようにするための方針の策定の必要性が、今後の課題としてあげられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災地域の調査研究の倫理的側面に関する文献的考察を終え、また、被災自治体からの調査研究の倫理的実態に関する聞き取りを終えた。また、その中で明らかになった、医学系以外の研究領域の調査研究、更に、学術領域以外の主体が行う調査研究の倫理的側面の実態の把握、倫理的配慮を欠く調査から被災者が不利益を被らないように避難所運営者、自治体や一般市民等がとるべき方針の策定など、次年度以降、取り組む課題が明確になったこと。
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Strategy for Future Research Activity |
医学系の調査研究に関しては、原則として「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づいて、倫理委員会での審査を経て、調査研究が行われるため、倫理審査の体制、基準が比較的一定である。一方、被災地特有の状況に応じた調査研究の倫理審査のあり方については明文化された基準がなく、東日本大震災以降に起こった災害被災地の事例やエキスパート・コンセンサスなどに基づいて、一定の判断の基準づくりを行うことが望まれる。一方、医学系以外の研究領域においては、倫理審査の体制、基準が定まっていないため、これらの学問領域の人を対象とする調査研究の倫理面の基準、更には被災地域における調査研究の倫理審査のあり方についてのコンセンサスづくりが必要である。さらに、学術機関以外の団体が調査を行うケースもあり、このような調査研究の実態の把握と倫理的配慮の普及啓発が必要になる。一方、並行して、倫理的配慮を欠く調査から被災者が不利益を被らないように避難所運営者、自治体や一般市民等がとるべき方針の策定に取り組む。
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Causes of Carryover |
27年度調査において明らかになった、医学系以外の研究領域の調査研究、及び、学術領域以外の主体が行う調査研究の倫理的側面の実態の把握が課題として残り、次年度以降、この課題に取り組むこと、また、並行して、倫理的配慮を欠く調査から被災者が不利益を被らないように避難所運営者、自治体や一般市民等がとるべき方針の策定に取り組む必要性が判明したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
医学系以外の研究領域の調査研究、及び、学術領域以外の主体が行う調査研究の倫理的側面の実態の把握、倫理的配慮を欠く調査から被災者が不利益を被らないように避難所運営者、自治体、一般市民等がとるべき方針の策定のための調査に支出する計画である。
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