2015 Fiscal Year Research-status Report
Positive Devianceによる課題解決手法を通じた栄養改善への効果
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15K15163
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神馬 征峰 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70196674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴沼 晃 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90647992)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 学校保健 / 栄養改善 / 参加型開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネパールにおいて平成27年4月に発生した大地震の影響で、当初の研究対象地での研究を計画通り実施することが困難となった。そのため研究対象県を変更し、介入内容を検討した。また、Positive Deviance(PD)手法の有効性検証の一環としてPD手法に関するワークショップを実施した。平成27年度の研究実施内容は以下の通りである。1) 4月に発生した大地震後に地域住民、援助団体への聞き取り調査を実施した。2) ネパール政府による震災被害の把握状況や国際支援団体の活動報告に関する情報収集をした。3) PD手法に関するワークショップ及び公開セミナーを平成27年11月に東京で実施しPD手法のネパールでの適用について検討した。4) 上の1)から3)を踏まえて研究計画書を作成し東京大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会にて承認を得た。 1)及び2)の結果、最も被害が大きくネパール政府や国際支援団体から多くの直接支援が行われているSindhupalchok県を介入研究の対象地から除外した。そして、被災による被害が比較的大きい県と比較的少ない県の2県を対象県とすることにした。 大震災により住民は農作物の苗・種や家畜を失い、食糧不足及び栄養不足に見舞われている。栄養不足の根本的な解決には、地域住民が入手できる食糧を利用した栄養改善施策が必要になる。そのため次年度以降に実施する介入として、大震災後の困難な社会経済状況下にありながらも、必要な食糧を賄えている住民の行動をモデルとする。そしてかかるモデルを住民主体で検討し、スケールアップできるポイントを定めてから介入を実施していくこととなった。 一方3)により、世界各国で実施されてきたPD手法をネパールでの栄養改善にどのように活かすか、ネパールでのPD手法の実施の経験を持つユニセフ専門家を招聘して検討し4)の研究計画書を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地の実情に合わせて研究内容を変更した。
Sindhupakchok県は地震の被害が大きく、学校の倒壊も多く見られた。また政府・外部団体からの支援プログラムが複数存在しており、食料の直接配給も行われていた。PD手法の有効性を検証する目的には適さないと判断し、対象県をDhadhing県とMyagdi県に変更した。また、震災後にガソリンの値段が高騰したため、プロジェクト対象地域を比較的カトマンズから近いDhadhing県・Myagdi県にある都市の学校とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は調査地(Dhadhing県・Myagdi県)における対象者(公立高校の教員と学童およびその保護者)にベースライン調査、介入研究、プログラム評価を行う。質・量的調査を用いた事前調査により地域のPDを特定し、その結果を用いた学校への介入研究を実施する。本研究のPDとは困難な社会経済状況下で実施可能な食料入手方法、適切な摂食・衛生行動である。PDを子ども主導の学校保健栄養活動を通じて学童とその保護者、地域に共有していくことで低栄養対策を行う。 本研究はクラスター化ランダム比較試験を用いた介入研究である。 ベースライン調査では学校保健担当の教員24名、8-10年生の学童2,400名への質問紙調査、および学童の身体測定を実施する。学童への質問紙調査の結果を基に、経済状況などが不利な状況下で栄養状態や摂食状況が優れた児童を発見する。該当する児童の保護者を対象に質的調査を実施しPDを特定する。 介入研究を実施するにあたりDhadhing県、Myagdi県の対象校24校をランダムに対照群(12校、n=1,200)・介入群(12校、n=1,200)に振り分ける。介入群の有志の学童による子どもグループを作成し、PDを学校保健栄養活動を通して共有する。その際、教員が適宜助言を行えるようファシリテーター・トレーニングを行う。介入期間は6ヶ月とし、教師へのトレーニング終了3ヶ月、6か月後にプログラムを評価する。 プログラム評価の際には介入群・対照群両方において、ベースライン調査を実施した学童2,400人を対象にした質問紙調査および身体測定を実施する。質問紙はベースライン調査と同じものを用いる。その調査結果と併せ、PDを用いた栄養改善活動が学童の栄養・発育状態や摂食状況に及ぼす影響について評価する。
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Causes of Carryover |
初年度は、ネパールで発生した大地震の影響のため予定していた介入の実施を行わなかった。その代わりに研究費を現地の実態調査に使用した。そのため介入研究で使う予定であった旅費・人件費に未使用分が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は調査・介入を実行し、この次年度使用額を用いる。 物品費については、研究成果発表のための印刷物に用いる。旅費についてはネパールや国際学会等への参加費に使用する。また、人件費としてデータ収集のため短期雇用4名を予定している。
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Research Products
(1 results)