2015 Fiscal Year Research-status Report
患者との継続的対話を取り入れた21世紀型医学研究ガバナンスに関する研究
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15K15167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 和人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10202011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医学研究 / 研究ガバナンス / ダイナミック・コンセント / 患者とのコミュニケーション / 患者との協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
少子高齢化の進展や疾病構造の変化が進む日本において、疾病の予防・診断・治療法の開発・改善を目指す医学研究はますます重要になっている。本研究の目的は、日本における医学研究基盤の上に立ち、ゲノム研究を含む先端医学研究に適用できる、患者や家族との継続的対話を取り入れた「21世紀型」の医学研究ガバナンスのための双方向コミュニケーション用インターフェイスを作成することである。 平成27年度においては、欧米、特に英国で先行して行われている同様のインターフェイスシステムについて把握するために、英国オックスフォード大学の研究者を招き、特別セミナー(平成27年11月)を開催するなどして検討を行った。システムの作成の過程で患者や家族との対話を行いながら作成を進めてきたことや、データの保護に関する留意点を把握することができた。また、米国で運用されているPEERというシステムの現状についても調査を進めた。 その上で、実際に日本で運用可能なシステムの作成を開始した。具体的には、整形外科領域の難病を対象に英国で運用されているRUDYというシステムのソフトウェアを取得し、神経内科疾患に合わせた日本語版の作成を進めた。また、予備的な活動として、平成28年3月、患者関係者数名に作成途上のシステムを見てもらい、意見聴取を行った。データ入力のための質問紙の内容やサイトへの登録の方法について、使いやすくする工夫が必要ということが明らかになった。全体としては予定していた研究内容に取り組むことができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた患者と医学研究者との双方向コミュニケーション用のインターフェイスについて、英国及び米国における類似の状況についての把握を進めた。特に密接な共同研究を進める英国オックスフォード大学の状況についての把握が進み、多数の患者との対話を通して、システム作りをともに行っている状況を理解することができた。そのうえで、対話用インターフェイスの試行版(RUDY Japanと暫定的に名付けた)を、神経内科疾患の患者を対象に作成するための準備を進め、試行版の作成を開始することができた。平成28年度の夏ごろをめどに本格稼働が予定できるところまできている。平成28年3月には、作成途中のインターフェイスについて、患者関係者の意見聴取も実施することができた。インターフェイスを用いて収集する患者からのデータのセキュリティも重要な課題であるが、オックスフォード大学の経験について共有してもらい、日本での体制整備の準備を進めることができたことも本年度の重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果をもとに、以下の2つの内容を実施する。 ①試行版インターフェイス(RUDY Japan)の改良、本格運用、およびその評価:平成27年度に作成した試行版について、ボランティアの患者やその他の患者の意見を詳しく聞くためのグループ・インタビューなどを実施し、改良を加えたバージョンを作成する。セキュリティに関する課題を十分に検討した上で、本格運用を行う。参加患者数がある程度に達した時点で、いくつかの点に注目し、評価を行う。(ⅰ)患者が入力する情報(健康状態、治療への満足、不満足他)を用いて新しい臨床研究がデザインできるかどうか。(ⅱ)患者との双方向コミュニケーションチャンネルを持つことによる患者や家族の満足度。(ⅱ)新しい臨床研究への参加者リクルートの方法としての評価、など。 ②国際比較分析:双方向対話型インターフェイスの作成の過程で得られた結果や経験をもとにして、こうした双方向対話システムに関する国際比較分析を行う。英国で運用されている双方向コミュニケーション・システムでの経験と本計画で作成するシステムとの比較により、異なる文化的背景、とくに欧米と東アジアという観点からの共通点や特殊性などを見出すための分析を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた物品購入の時期を次年度に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の早い時期に執行する。
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Research Products
(2 results)