2015 Fiscal Year Research-status Report
人生において一度だけの重大かつ困難な意思決定に際して医師に求められる望ましい態度
Project/Area Number |
15K15172
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
明智 龍男 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80281682)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 倫理 / がん / せん妄 / 終末期 / 医師患者関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、倫理的問題や実施可能性のうえで、実地臨床では検討することができない、治療抵抗性の不可逆的な活動型終末期せん妄患者の家族に終末期鎮静に関して説明する際に、医師はどのような態度で臨むべきか、という患者・家族にとって重大かつ困難な意思決定に際して医師に求められる望ましいコミュニケーションや態度を明らかにすることを目的とする。 当初は3つの異なる患者-医師関係を反映させたシナリオ(1.paternalisticなもの、2.情報を共有し、家族の意向も尊重しながら意思決定をすすめていくshared decision makingタイプのもの、3.情報提供のみして最終的には家族の自律性を重んじるautonomy尊重型)を作成する予定であったが、内容以外の会話の長さを同等にするなどが困難であることが判明したため、2.のshared decision makingのタイプのシナリオは作成が困難であると判断するにいたった。その結果、paternalisticなものとautonomy尊重型の2つのシナリオを作成することに変更し、これらについては完成した。 またアウトカムに関して、いずれのスタイルを好むかに加え、医師の共感能力を主要評価項目として追加することとした。具体的には、医師の共感能力を、「あたたかい」-「つめたい」、「好感が持てる」-「好感が持てない」、「共感的である」-「距離を感じる」、「細やかだ」-「無神経だ」、「気遣いがある」-「気遣いがない」の計5項目、各項目0-10で評価し、医師の共感を合計点(0-50)で示す。点数は逆に解釈し、点数が低いほど医師の共感が高いことを示す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シナリオの検討段階で研究方法に関して若干変更が加わり、予想以上にシナリオ作成に時間を要しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに2つの異なる患者-医師関係を反映させたシナリオ(1.paternalisticなもの、2.情報提供のみして最終的には家族の自律性を重んじるautonomy尊重型)が完成した。本年度はまずこれらシナリオを反映したビデオを撮影することとする。 当初の計画とは変更し、その後、まず医療従事者(がん医療に従事した経験のある医師、看護師)100名程度を対象として、前述の2つの異なる患者(今回の場合は家族)-医師関係を反映させた診療場面を模写したビデオを視聴してもらい、自身が当該家族だった場合、いずれの患者-医師関係が好ましいと感じるか等を選択してもらう。あわせて一部の対象に対しては面接調査を実施し、その意思決定スタイルが好ましいと感じる理由を質的に検討する。本面接調査に関しては半構造化した方法で実施し、同意が得られれば録音し逐語に起こして内容分析を行う。以上により、がん患者の家族が実際に、終末期鎮静に際しての医師の説明としてどのような役割を求めているか、またその理由を推測する。あわせて医学的社会学的患者背景として、年齢、性別、婚姻状況、家族構成、教育経験、雇用状況、がん経験の有無)等をアンケートあるいは面接にて聴取する。医療従事者に関しては研究協力者の異動などもあったため、名古屋市立大学病院、東大阪病院、名古屋医療センターでがん診療に従事した経験を3年以上有する医師、看護師を中心に募集することとする予定である。 なお、できあがったシナリオを供覧した際に一部医療者は自身の過去と重ね合わせて比較的強い動揺を経験したケースがあっため、まずは医療者を対象に施行後、一般住民への適応に関してはあらためて考えることにした。
|
Causes of Carryover |
研究進捗がやや遅れたことにより、予定していた支出が次年度に繰り越しとなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力者への謝金、ビデオ編集に必要なソフトや消耗品の購入に使用する。また、面接調査に必要な経費としても使用する予定である。
|