2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15177
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
丹野 清美 立教大学, 社会情報教育研究センター, 学術調査員 (70550812)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本語版DRS / Shared Decision Making / Regret / 主観的アウトカム評価 / Patient Reported Outcome / 構造方程式モデリング / 女性生殖器系疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本においてほとんど行われていなかった臨床におけるShared Decision Makingに焦点を当てた。患者が治療の選択をする際、どう判断するのか、医療処置を受けることに対する患者の意思決定が何に影響しているのか、心の内外にあるどのような力が患者に働き、その患者の見方と考え方を形作るのかを明らかにすることを目的としている。研究初年度(平成27年度)は、医療社会学、心理学のそれぞれの学問分野の文献と先行研究の検討を行った。また文献検討と並行して、以下の量的分析による結果の検討を行い、次年度研究に向けて具体的な計画準備を行った。前年度のプレスタディの結果から、女性生殖器系3疾患に絞り、患者要因の検討を行った。対象患者に行った質問紙調査の結果から、日本語版Decision Regret Scale(以下、日本語版DRS)と健康関連QOL、患者要因の関係を、潜在クラス分析、パス解析の多母集団比較により仮説検証した。結果は以下1から3である。 1、子宮・卵巣の良性腫瘍:Regretに直接影響を及ぼしている因子は、患者の病態要因「自覚症状」、行動要因「選好」、治療要因「術式(開腹手術または腹腔鏡下手術)」であった。 2、子宮・卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍:Regretに直接影響を及ぼしている因子は、患者の病態要因「自覚症状」「がん経験」「ステージ」、治療要因「補助療法」であり、診療前及び診療中の要因が大きいと示唆された。 3、子宮頸部異形成:Regretに直接影響を及ぼしている因子は、患者の行動要因「選好」 「キーパーソン」であった。 平成27年度は、文献検討及びプレスタディの結果の分析検討を行ったところ、患者の外的要因が明らかであった。本研究(次年度)では、さらに患者の内的要因と意思決定の関係を検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度(平成27年度)は、文献検討を行い、仮説を策定しアンケートを作成する予定であった。研究代表者は、研究協力者はじめ医師等医療専門職者からの医学的コンサルテーションも受け、プレスタディの結果検証や量的分析を行った。検証結果は、「研究実績の概要」の通りであり、患者の外的な要因がRegretに影響を及ぼしていること、また疾患による違いも明らかになった。検証結果を受け、また以下の2つの理由により、本研究の進捗が少し遅れることとなった。 1、日本語版DRSが新規の概念による尺度であり、本研究スタートの時点では想像をしていなかった反響が広がっている。様々な施設での日本語版DRSの使用が検討され始めている。また研究会も予定されており、今後さらに日本語版DRSが使用されることが予想される。当初の研究計画では、同じ研究の繰り返しとなることが予想されることから、挑戦的萌芽研究であることを踏まえ、さらに新しい検討に入る必要があると考える。 2、当初よりさらに患者の内的な要因に焦点を当てる研究とすることから、研究計画は慎重さが必要となる。臨床における介入研究になることから、研究フィールド及び所属機関での倫理的審査が必要となり、綿密な計画が必要となる。 研究計画の実施は、当初より少し遅れてはいるが、患者の内的要因に焦点を当てることにより新規性が高い。将来の情報技術の応用(医療用ロボットの効果、汎用人工知能への導入等)を視野に入れた前段階の研究として考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度からの計画は、研究フィールドにおける倫理審査の承認後、アンケート調査を実施し、アンケートの結果に基づき、統計手法を用いて量的調査を行うこととなっている。また研究結果について学術発表を行う計画である。 引き続き、研究フィールドにおいて研究協力者及び医師等医療専門職者からの医学的コンサルテーションを受けながら、さらに患者の内的要因に焦点を絞り、文献検討も行う。今年度中には倫理審査を通過し、研究がスタート可能な状況にする。 学術発表は平成27年度同様、積極的に行っていく。日本語版DRSの妥当性検証の論文は海外のジャーナル(Journal of Nursing Measurement)に掲載されたことから、今年度以降は海外での学会発表等を通して情報共有を行っていく。 また、日本語版DRSが当初の想像以上の反響であることから、他施設での日本語版DRSの研究結果についても情報共有を行っていく。さらに今後の、臨床における患者の意思決定研究に貢献できるよう情報発信を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定をしていたアンケート作成のための諸費用、研究遂行のための学会発表が予定より遅くなり、旅費が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、仮説を策定しアンケートを作成する。臨床研究になることから、研究代表者は、研究協力者はじめ医師等医療専門職者からの医学的コンサルテーションも受け、質問項目の内容(用語等)が医学的に適切なアンケートを作成する。また、患者へのアンケートとなることから、研究実施施設の倫理委員会に申請し承認を得てから、研究を開始する。 以上の研究計画を遂行するために、アンケート作成や謝礼金等の諸費用、学会発表の諸費用として使用する。
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Remarks |
「PRO(Patient Reported Outcome)に基づく意思決定支援を考える」 公益財団法人東京都総合医学研究所 難病ケア看護プロジェクト主催講演(2016年3月28日)
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Research Products
(3 results)