2015 Fiscal Year Research-status Report
プロスタグランジン輸送体を作用標的とする新規抗炎症薬の提唱
Project/Area Number |
15K15181
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中西 猛夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30541742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 恵一 金沢大学, 保健学系, 教授 (30204663)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 炎症 / マクロファージ / プロスタグランジン / 開口分泌 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、MφからのPGE2分泌にプロスタグランジン輸送体PGT(以下OATP2A1)が関与することを明らかにするために、野生型(WT)およびOatp2a1をコードするSlco2a1欠損(Slco2a1-/-)マウス由来の腹腔MφおよびRAW264細胞を用い、細胞内Oatp2a1の発現局在、細胞PGE2動態およびPGE2分泌のCa2+依存性を検討した。免疫組織学的なアプローチから得られたOatp2a1細胞内局在と密度勾配遠心法により分画された各画分におけるPGE2取込み実験の結果から、Oatp2a1は細胞内PGE2を酸性コンパートメントに貯留に働くことが示唆された。さらに、リポ多糖(LPS)により活性化されたMφからのPGE2分泌は、Slco2a1欠損あるいはCa2+キレート剤添加により有意に減少した。したがって、Oatp2a1はMφ内のPGE2動態調節因子として重要であり、PGE2の開口分泌に間接的に関与することを報告した(Biochem Pharmacol, 98:629-638, 2015)。本輸送体の役割をin vivoで検討するために、Mφ特異的Slco2a1-/-の作出も同時に行った。また、これらSlco2a1-/-における炎症性の発熱の上昇遅延が見られたことも確かめられ、現在その詳細な分子機序を解明している。さらにOATP2A1の阻害剤についてFDA承認ライブラリーを用いたスクリーニングを実施、高い阻害親和性を有する数個の候補化合物の同定に成功した。一方、同様な現象が大腸癌細胞でも観察されたことから、PGE2分泌の新しい分子機構として位置づけ炎症性疾患との関連についても予備調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、細胞内動態に対するOATP2A1の役割を明確にすることができた。さらに、LPS投与Slco2a1-/-において発熱が抑制されることが示された。以上、Oatp2a1は抗炎症薬および解熱薬の作用点として期待され、本年度はその有害事象の有無、性質、程度について引き続き検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、炎症/関節炎動物モデルにおけるOATP2A1機能抑制の薬効と副作用を提案した。しかし、昨年度の検討により、LPS投与時にSlco2a1-/-で発熱抑制が認められたことから、鎮痛効果に加え、解熱効果も対象として検討を加える。具体的には、Slco2a1を欠損する炎症/関節炎およびLPS投与発熱モデルを用い、(1) Cox-1/2、PGE2受容体および代謝酵素の発現に与える影響の評価、(2)抗炎症効果評価(血漿中炎症性サイトカインや尿中PGE2量の比較)、(3)疼痛および発熱閾値の測定などの行動薬理学的試験、(4)胃潰瘍や消化器障害、(5)心血管有害事象の評価([TXA2]/[PGI2]比測定による有害事象リスク判定)、(6) OATP2A1阻害剤の抗炎症・解熱鎮痛効果(薬効)および副作用評価、を行う。 また、阻害剤の薬効が確認されれば、薬効が局所PGE2動態変動に起因するかを明確にするため、微小透析法などを用いて、PGE2動態を解析する。以上の結果を総合的に勘案し、OATP2A1阻害が新規抗炎症・解熱鎮痛効果の作用点として有用であるか否かを明らかにする。
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Research Products
(7 results)