2015 Fiscal Year Research-status Report
末梢血単核球を標的とした生活習慣病リスク診断法の開発
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15K15192
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木原 進士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20332736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 浩靖 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00631201)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 医療・福祉 / 分析科学 / 細胞・組織 / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食事負荷前後の末梢血単核球(PBMC)mRNA解析から、食後に生じる炎症や酸化ストレスを食前の採血で評価できる分子を同定し生活習慣病リスク診断法の開発につなげるものである。 昨年度は、書面による同意を得た薬物療法を受けていない成人男性10名、女性30名に、12時間絶食後、テストミール(エネルギー460 kcal、蛋白質18 g、脂質 18 g、キューピー社 E460F18)を摂取してもらい、負荷前、30分、1、2時間後の各種代謝パラメータを測定した。負荷前、1、2時間後の血液からはPBMCも分離、RNAを抽出し、RT-PCR法を用いて、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-1、IL-6 及びsuppressor of cytokine signaling (SOCS) 1-3のmRNAレベルを定量した。 炎症性サイトカインTNF-α、 IL-1、 IL-6 mRNA量は、食事負荷によりPBMCにおいて有意に増加した。食事負荷による血清中性脂肪値の変化はTNF-αの変化と、血糖の変化はIL-1の変化と有意な正相関を示した。食前のSOCS mRNA発現量と負荷による炎症性サイトカイン発現変化の解析では、食前のSOCS1およびSOCS3 mRNA発現量と炎症性サイトカインmRNAの発現変化に有意な負の相関を認めた。 以上より、食事負荷によってPBMCに誘導される炎症反応の強度は、食前のSOCS1およびSOCS 3 mRNA レベルに影響を受けることが明らかとなった。従って、食前のPBMC中のSOCS1と3 のmRNAを測定することは、生活習慣病リスクの評価につながることが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食前採血で食後の炎症反応を評価する分子の同定を目的とし、食事負荷によって末梢血単核球に誘導される炎症反応の強度が、食前のSOCS1およびSOCS 3 mRNA レベルに影響を受けることを明らかにし、さらに新たな分子の同定に向けた解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、食事負荷により中性脂肪の上昇が認められ、IL-1とIL-6のmRNAが共に上昇した2名と、IL-1とIL-6のmRNAが共に変化しなかった2名のマイクロアレイ解析を行う。そして、食前後で2倍以上の変動があったmRNAについて、分子の機能や遺伝子間のつながりの解析、さらにクラスター解析を行い、SOCS1や3とも比較し、食後に生じる炎症や酸化ストレスを食前の採血で評価できる分子の候補を選定する。候補分子を、対象40名のPBMCにおいてRT-PCR法で定量し、PBMC におけるIL-1とIL-6 mRNAの上昇や、食後血糖、脂質、の上昇との相関を検討する。また、候補分子のsiRNAを用いて培養細胞で発現を抑制し、炎症シグナル伝達経路への影響を検討する。この様にして、SOCS1やSOCS 3以外の、食前採血で生活習慣病リスクを評価できる可能性のある分子を同定し、その意義を解析する。
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