2015 Fiscal Year Research-status Report
迅速・高精度な組織切片in situ遺伝子定量分析法の開発
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15K15199
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 香枝 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40373310)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNA / 組織切片 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの病理診断において、病理標本からの形態を保ったままの癌遺伝子の変異解析は、革新的な診断ツールになり得る。本研究では、マイクロデバイスにより、少ない試薬量で、効率良く 組織切片からがん遺伝子が検出できる方法を開発し、病理検査の新しい方法への適応可能性を探索する。病理診断の課題である「病理標本上で形態を保ったままの遺伝子変異の検出」「質的・量的に精度の高い検出」「迅速性」を持った方法論の確立を目的に、マイクロデバイスを用いた細胞内 Padlock RCA法による遺伝子変異検出法の開発を行う。具体的な研究項目を以下に設定し研究した。
1.デバイス構築:培養細胞を入れるデバイスは、カバーガラスとシリコーンゴムであるポリジメチルシロキサンPDMSで流路を型どりしたシートを貼り合わせて作製した。組織切片の場合は切片を貼り付けたスライドグラスの上に流路を持つシートを被せるようにした。PDMSと組織切片への接合は、希釈した未硬化のPDMSを接着剤として貼り付けた。送液時に漏れのない接合でかつ観察時にはPDMSシートをはがしカバーガラスに張り替えられるデバイスを開発した。 2.反応の高速化:物理的効果を利用して反応効率を向上させるために、デバイス内での溶液の撹拌を検討した。超音波照射による溶液混合の影響を検討したところ、蛍光プローブの結合の過程でこれまで20分必要だった反応時間が5分まで短縮できた。化学的効果を利用して酵素反応を速くするために、添加剤を加えた上で至適温度よりも高い温度での反応も検討した。添加剤としてBSA濃度をこれまでより高濃度で加えたところ産物の輝度が高まり酵素の失活が防げる可能性が見いだされたが、至適温度以上ではすべて失活してしまい、また、プローブと標的分子の結合も弱くなるためか高速化に関しては効果的ではなかった。 3.mRNAの分析:培養細胞および組織切片を用いてβアクチンおよびがん遺伝子K-rasの分析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、Padlock Rolling circle amplificationをマイクロチップ化することに成功し、細胞内のmRNA分析、組織切片のmRNAの分析を実証したため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
数の多いβアクチンのmRNA検出は容易にできたもののがん遺伝子K-rasの検出は蛍光顕微鏡で検出するには産物数が少なく輝度も低かった。細胞膜透過性の制御が反応効率を左右する条件と考えられるため、効果的に検出できる条件を検討する。また、蛍光標識を工夫することで、低い輝度を改善することも試みる。
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Causes of Carryover |
試薬等は学内予算で以前に予備実験のために購入したものが利用でき、新しいプローブを試す実験は行わなかったため、新規に購入せずに実験できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
感度向上のための試薬の新規購入に使用する。また、本年度の成果報告のための学会参加費にも使用する。
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