2016 Fiscal Year Research-status Report
迅速・高精度な組織切片in situ遺伝子定量分析法の開発
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15K15199
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 香枝 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40373310)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | mRNA / Padlock probe |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの病理診断において、病理標本からの形態を保ったままの癌遺伝子の変異解析は、革新的な診断ツールになり得る。本研究では、マイクロデバイスにより、少ない試薬量で、効率良く 組織切片からがん遺伝子が検出できる方法を開発し、病理検査の新しい方法への適応可能性を探索する。病理診断の課題である「病理標本上で形態を保ったままの遺伝子変異の検出」「質的・量的に精度の高い検出」「迅速性」を持った方法論の確立を目的に、マイクロデバイスを用いた細胞内 Padlock RCA法による遺伝子変異検出法の開発を行う。昨年度、数の多いβアクチンのmRNA検出は容易にできたもののがん遺伝子K-rasの検出は蛍光顕微鏡で検出するには産物数が少なく輝度も低かったため、今年度はmRNAの検出を中心に研究した。
培養細胞を用いてβアクチンmRNAの分析をモデル実験として検討を行った。RCA産物数の再現性が悪いため原因を探ったところ、前処理であるパラホルムアルデヒドの固定が十分でないと産物が得られないことが示された。これはmRNAが細胞内に留まらず、複数回におよぶ洗浄過程で細胞外に流れ出てしまったためと考えられる。そこで、パラホルムアルデヒドの濃度を検討したところ、一般的な条件である4%のときに最も産物数を得ることができた。このとき、輝度も十分な値を得ることができた。
一方、がん遺伝子K-rasの検出用のPadlock probeの特異性の確認を合成オリゴDNAで行った。Padlock probeの末端を変異の配列とした場合と、末端から二塩基目を変異の配列とした場合を比較したところ、末端から二塩基目に変異の配列とした場合、フルマッチの場合のみしか産物が得られないことが確かめられた。このプローブの特異性については、Anal.Biochem.2017の中で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であったがん遺伝子K-rasの検出の改善まで実験を行っていないため遅延しているが、パラホルムアルデヒドの濃度検討やプローブの特異性を確かめる実験は当初の目的に無かった実験で、これについては明確な結果が得られたので、総合的には進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
固定時間も検討し、最適な固定化条件を調べ、がん遺伝子K-rasの検出を試みる。反応の高速化についての検討としては、溶液の撹拌の効果について再検討をする。溶液の入れ替え時に溶液が残らないようなチップの形状も検討する。
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Causes of Carryover |
すでに購入済みのプローブと細胞を使用した実験を主に行ったために、新規に購入したものが少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
がん遺伝子の検出のためのがん細胞株の購入と反応に使用する生化学試薬を購入する。
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