2015 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎の慢性掻痒メカニズムの解明を目指した新しい研究アプローチ
Project/Area Number |
15K15203
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 誠 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40373394)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 痒み / アストロサイト / 脊髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎等による慢性的な痒みは,過度の肉体疲労や精神的ストレスなどを起こし,多くの患者のQOLを低下させている。しかし,痒みの慢性化機序は依然不明である。本研究では,アトピー性皮膚炎モデルの脊髄後角でアストロサイトが活性化するという事前研究をもとに,その因果性を解明することを目的とした。 項目1)脊髄後角アストロサイトの活性化メカニズム:アストロサイトの活性化と皮膚炎との関連性を検討した。モデルマウスの爪を切り揃え,引掻き行動による皮膚への物理的な刺激を回避した結果,脊髄後角アストロサイトの活性化と皮膚炎が緩解した。さらに,TRPV1陽性C線維を破壊したモデルマウスではアストロサイトの活性化が抑制されたことから,炎症皮膚から同線維を介して脊髄後角のアストロサイトへ情報が送られている可能性が示唆された。 項目2)活性化アストロサイトの慢性掻痒への因果性:転写因子STAT3に注目した。STAT3はモデルマウスの脊髄アストロサイトで活性化し,さらにJAK阻害剤による薬理学的阻害やアストロサイト選択的なSTAT3不活性化により,アストロサイトの活性化および痒み行動が共に抑制された。 項目3)脊髄後角アストロサイトによる痒み神経伝達の変調メカニズム:アトピー性皮膚炎モデルマウスで変動するアストロサイト由来因子としてリポカリン2(LCN2)を特定した。モデルマウスの脊髄後角においてLCN2はアストロサイトに発現していた。さらに,アストロサイト培養細胞でも発現が確認され,その発現はSTAT3依存的であった。モデルマウスの脊髄後角アストロサイトのLCN2をノックダウンすることで痒み行動が抑制された。 以上より,アトピー性皮膚炎に伴って脊髄後角でSTAT3依存的に活性化するアストロサイトと,同細胞から産生されるLCN2が痒みの慢性化に重要であることを世界で初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の実施項目として計画した内容をほぼすべて遂行することができ,さらに脊髄後角アストロサイトのLCN2を選択的にノックダウンすることにも成功し,その痒み行動における重要な役割を明らかにすることができた。さらに研究成果をNature Medicine誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に計画している各項目に従って順次予定通り進めていく。
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Causes of Carryover |
マウス凍結精子購入代金が当初予定よりも安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験動物購入に使用予定。
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[Journal Article] STAT3-dependent reactive astrogliosis in the spinal dorsal horn underlies chronic itch2015
Author(s)
Shiratori-Hayashi M, Koga K, Tozaki-Saitoh H, Kohro Y, Toyonaga H, Yamaguchi C, Hasegawa A, Nakahara T, Hachisuka J, Akira S, Okano H, Furue M, Inoue K, Tsuda M
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Journal Title
Nat Med
Volume: 21
Pages: 927-931
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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