2016 Fiscal Year Research-status Report
減塩指導への応用を目指した塩味の忌避的反応の個人差の解明
Project/Area Number |
15K15225
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
並河 徹 島根大学, 医学部, 教授 (50180534)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 予防医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、遺伝的に高血圧を発症するモデルラットSpontaneously hypertensive rat (SHR)とその正常血圧対照動物であるWKYを用いて、2 bottle法にて食塩嗜好性を検討し、SHRにおいて、高濃度の食塩水でも忌避反応が起こりにくいことを見いだした。また、SHRとWKYにて苦味や酸味に対する反応性について検討したところ、低濃度ではむしろ、SHRでこれらの味を好む傾向を認めた。本年度はこれについて追試を行うとともに、遺伝的メカニズム解明のためにWKYとSHRを交配して作成したF1ラットで同様の実験を実施した。食塩嗜好性についての再現性は得られたが、苦味、酸味については再現性が得られなかった。また、旨味、甘味については2系統で差がないことが明らかとなり、これらの結果からSHRの味覚反応は塩味についての特異的なものであることが明らかとなった。また、F1ラットでは塩味に対する反応はWKY, SHRの中間となり、単因子遺伝ではないことが示唆された。 ヒトを用いた解析では、少量の食塩水を用いて忌避的反応を検査する方法を、特定健診に参加した住民1,254人に対して実施した。5種類の濃度の食塩水(0.25%、0.5%、1%、1.5%、2%)を薄い濃度から口中に含み、その塩水の摂取を避けたいと感じた濃度を記録した。また食習慣は塩分チェックシートを用い調査を行い、加えて随意尿で塩分摂取量の推定を行った。忌避反応検査の結果、1.5%の食塩水までで忌避的反応を示した人が63%、2%以上の食塩水に対しても忌避的反応を示さなかった人が16%であった。忌避反応を示した濃度と塩分摂取量に相関は認められなかったが、塩分チェックシートのスコアでは忌避反応濃度と正の相関が認められ、塩分摂取と忌避反応の間に関連があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝的なラットモデルを用いた検討で食塩嗜好性にも遺伝子の影響が確認でき、また苦味や酸味に対する反応に新規の知見が得られたことから、そのメカニズム解明の端緒を得る事ができた。ヒトにおける食塩嗜好性の検討についても基本的な検討方法を確立できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究で開発された忌避的反応の検査法を、島根大学疾病予知予防プロジェクトによって構築された生活習慣病コホートを用い調査を行う。またこの際、尿を用いた塩分摂取量の推定を行う。また、身長・体重などの基本的なデータに加え、血圧、降圧剤服薬状況などについてもデータの収集を行う。平成29年度は1000名を目標に検査を行い、検査実施上の問題点の抽出を行う。
|
Causes of Carryover |
ラットを用いた実験には時間がかかり、予定の回数をこなせなかった実験が一部にあった。したがって、実験に用いた数がまだ少ないものがあり、次年度にこれを実施する計画である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度実施できなかったラットを用いる味覚実験を実施する。また、食塩嗜好性にかかわる遺伝的メカニズム解明にむけ、F2を用いた遺伝解析を開始する予定である。
|
Research Products
(6 results)