2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクターピロリ感染とその除菌の栄養摂取・生活習慣病への影響
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15K15231
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
下山 克 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (50312492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中路 重之 弘前大学, 医学研究科, 教授 (10192220)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 血清脂質濃度 / ペプシノーゲン / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究と過去の岩木健康増進プロジェクト健診で得られた成績から、本年度はH. pylori感染と鉄代謝・血清ペプシノーゲン(PG)濃度の推移を中心に検討した。 欧米の診療ガイドラインでは成人の鉄欠乏性貧血に対し、H. pylori感染の除菌が勧められており、除菌により血清鉄やフェリチン濃度の改善が期待できるとされている。住民健診受診者でH. pylori除菌前後の比較が可能なものについて鉄摂取量およびビタミンC摂取量を検討したが、除菌前後で有意な変化はなかった。ヘモグロビン・血清鉄濃度も除菌前後で有意な変化はなかった。しかし、フェリチン濃度は男性では増加傾向を示し、とくに女性では49.4 ± 36.1から64.8 ± 33.7 µg/dlに有意に増加した (p<0.05)。これらン結果から、H. pylori感染者では除菌に成功すると、鉄・ビタミンC摂取量に影響ないが、血清フェリチン濃度が上昇する可能性が示された。 健診時に便中H. pylori抗原と血清抗H. pylori抗体を測定された者について、血清PG I, II濃度の長期経過を調べた。PG I濃度は未感染者において、男性では40歳代以降、女性ではすべての年代で2005年から2014年に有意な増加をみとめた。一方、PG I濃度は感染持続者では若い世代から高く、男性・女性ともに60歳代以降で2005年から2014年に有意に低下していた。PG II濃度は未感染者では男性・女性ともに有意な変化はなかったが、感染持続者では若い世代で高く、男性では50歳代以降、女性では60歳代以降で2005年から2014年に有意に低下していた。H. pylori感染持続者では比較的若い世代でPG I, II濃度が高くなり、50歳代以降で顕著に低下していくが、未感染者では男性・女性ともに年齢とともに増加していくことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題で必要と考えられていた検査成績は28年度まででそろったと考えられる。予定していた他にも次世代シークエンサーによる個人の腸内細菌叢の情報も得られている。 平成28年度は主に「鉄代謝への影響」、「エストロゲン濃度、生活習慣も含めたピロリ菌感染と骨減少症の関連」と「感染者と非感染者の血清ペプシノーゲン濃度の長期経過の違い」について検討し、学会で発表した。これらの内容については論文を作成し、一部はすでに投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に検討し学会で公表した「ヘリコバクター・ピロリ感染と除菌の鉄代謝への影響」と「ヘリコバクター・ピロリ感染者と非感染者の血清ペプシノーゲン濃度の長期経過の違い」について投稿中の論文を受理されるようにする。 ピロリ菌感染と除菌の動脈硬化への影響を検討するために、2005年に感染者と診断されその後除菌治療を受けなかったものと除菌治療を受けた者で動脈硬化のABI、PWVの長期の推移を明らかにする。動脈硬化に関与すると考えられる除菌後の血清脂質濃度の推移、BMIの推移も併せて検討する。 また、次世代シークエンサーによる腸内細菌叢の個体差も結果が得られているので、動脈硬化への胃・腸内フローラの影響として検討していきたい。
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Causes of Carryover |
追加で血清抗体価の測定を行ったが、測定会社が無償で行ってくれたので測定費用が掛からなかった。また、投稿論文の掲載料を予算として考えていたが、これまで掲載が決まっている論文には掲載料がかかっていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ピロリ菌の除菌治療が成功しているかどうか調べる対象が多くなると考えられるので、その費用として使用する。また、作成中・投稿中の論文が数編あるので、それらが掲載料が必要となるjournalに受理・掲載された場合の費用とする。
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Research Products
(7 results)