2015 Fiscal Year Research-status Report
現代版不定愁訴MUSの日本における頻度・プロフィール調査
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15K15275
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
岡田 宏基 香川大学, 医学部, 教授 (00243775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西屋 克己 香川大学, 医学部, 准教授 (60526838)
舛形 尚 香川大学, 医学部附属病院, 教授 (70263910)
釋 文雄 日本大学, 医学部, 助教 (90647976)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | MUS / 医学的に説明できない症状 / 頻度調査 / 疼痛障害 / 倦怠感 / しびれ感 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)頻度調査の実施 1)調査依頼先:a)香川県医師会に所属する診療所および小規模病院計571施設に対してMUS頻度調査の協力依頼を郵送で行った。このうち、121施設からFAXで調査への諾否が得られ、そのうち16施設から調査協力の申し出があった。b)香川大学医学部附属病院、高知大学医学部附属病院、および日本大学医学部附属病院内科外来においても調査を行った。 2)調査方法:連続した新患50名(大学病院では100例)に対して受診動機となった愁訴を列記して頂き、診察医にそれぞれの愁訴が、a)医学的に説明可能か、b)対応が困難か、を記載していただいた。 (2)調査結果 1)MUSの頻度について:現在までに14施設から817例のデータが集積されている。このうち、「説明できない」と判断された比率は、医療機関別では0~90%で平均14.5%、患者ベースでは817例中136例で、16.6%であった。 2)愁訴の内訳について:MUSと判断された愁訴は185抽出され、そのうち最多の愁訴は疼痛で51(27.6%)、次いで倦怠感16(8.6%)、しびれ11(5.9%)、発熱7(3.8%)、呼吸困難感6(3.2%)、咳5(2.7%)、ふらつき5(2.7%)、嘔吐4(2.2%)、食思不振4(2.2%)、めまい4(2.2%)などとなっていた。疼痛の部位としては、背部12、胸部11、腹部6、頭部3、腰部3などであった。疼痛は単一部位のものが大多数で、線維筋痛症のように、複数の部位の疼痛を訴えるものはほとんど見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)調査実施について 初年度の目標であったMUS頻度調査について、香川県内の中・大規模病院を除くほとんどの医療機関に対して調査の依頼をすることができた。調査協力が得られたのは14施設と少数であったが、協力が得られなかった理由としては、診療が多忙で協力できない、調査が煩雑である、MUSと判断される患者はほとんどいない、といったものであった。欧州のようにかかりつけ制度でなく、フリーアクセスである日本の医療制度の下では、厳密な頻度調査には限界があることが窺えた。しかし、大学病院等の集積がまだ十分でないため、最終的には1000例を超す症例集積が得られる見通しであり、かなりエビデンスを有した調査結果が得られることが見込まれる。 (2)調査結果について 現在までの集計では、患者ベースでのMUS頻度は16.6%となっている。これは欧州での頻度にほぼ匹敵する結果である。日本では、MUSはかつては「不定愁訴」と表現されていたが、国内文献によると、これまで「不定愁訴」についての頻度調査は見出されなかった。したがって、今回の調査結果が初の実数調査となり、MUS/不定愁訴への今後の対応を検討する上で貴重なデータとなると考えている。 医療機関別に見ると、MUS頻度は0から90%とかなりのばらつきがあることがわかった。これには日本の医療制度が大きく関係していると考えられる。内科一般のような医療機関では頻度は概ね10%以下となっており、ある程度の検査を受けることができる小規模病院では16から20%と高値になっていた。すなわち、日本では医療機関への受診はフリーアクセスであるため、患者が自分の愁訴を標榜診療科名とを照らし合わせて、初診の段階から自分の愁訴を解決できそうな医療機関をかなり選別して受診していることが窺えた。このことも、今後の日本の医療制度を考える上で重要な視点と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)MUS頻度調査の継続 初年度は主として一次医療機関を中心とした調査を行ったが、これまでの調査結果から、日本ではMUS患者は初診時からどちらかといえば二次以上の医療機関を受診していることが推察された。このため、大学病院での調査を継続すると共に、香川県内の中核病院でも調査を行うこととする。また地域差を考慮して、県外の医療機関にも協力を要請する予定である。 (2)MUS患者のプロフィール調査 研究申請時には、初診患者のうちMUSが疑われる患者に対してプロフィール調査を行う予定であったが、初年度の調査結果から十分な症例数が見込めないことが推察された。このため、既に心療内科外来に通院中の患者に対して自覚症状の調査を行うこととする。対象は、不安障害、うつ病、および不定愁訴様の訴えが持続している患者である。これらの患者に対して、a)自覚症状リスト、b)QOL調査、c)身体感覚増幅尺度、およびd)疾患認知(Illness Perception)についての事故記入式調査票による調査を実施する。香川大学医学部倫理委員会への申請・承認後に、県内数カ所の心療内科外来受診患者約300名に対して実施の予定である。 (3)調査のまとめ 最終的に(1)、(2)の結果を集計・解析し、関連学会で報告し論文化する予定である。
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Causes of Carryover |
頻度調査を実施できる医療機関が予想より少なかったため、郵送費が予定を下回り、残高が生じることとなった。 また、2年目に使用する予定の心理テストの一部を前倒しして購入する予定であったが、購入の手続きが間に合わず、2年目の購入とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目に使用する有料の心理テストについては、2年目に購入手続きをして購入することとする。 郵送費については、県外の医療機関に依頼して調査を行う際に調査用紙の送付・回収に利用することとする。
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Research Products
(3 results)