2015 Fiscal Year Research-status Report
血液透析患者の低乳酸・高ケトン体症のメタボロミクスによる解明と個別医療の検討
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15K15326
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 博 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60215829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 正子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10466534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 代謝応答 / 乳酸 / ケトン体 / メタボロミクス / 糖尿病 / ビオチン |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度研究成果: 「意義・重要性」 近年本邦で使用されているⅣおよびⅤ型ダイアライザーを用いた血液透析では、重要な有機酸、アミノ酸、脂肪酸、ホルモン、ビタミンなども高効率で漏出する。各回の透析に於ける中~低分子量代謝物および生理活性物質の大量漏出がもたらす、透析治療中に惹き起こされる患者代謝への擾乱はほとんど研究されてこなかった。すでにわれわれはNMRメタボロミクス法を開発し、本法で透析治療4-5時間の患者血漿と廃液の測定によって、患者の個別の代謝応答をモニターすること成功した。この結果、糖尿病患者の代謝応答は透析後半に乳酸、ピルビン酸が低値のままであり、ケトン体値が跳ね上がることを見出した。これは解糖系働きが滞り、脂肪酸酸化によって糖新生経路が動く飢餓状態の代謝と同様であることを示す。糖尿病患者が毎回の透析でこの特異な代謝を繰り返すことは予後にも影響があることが示唆される。インスリンなどの低分子蛋白やビタミンの除去やなどが原因となることも予想される。メタボロミクスで代謝物動態を調べることは予後改善の手掛かりを得る上で重要であろう。 「内容」 先行研究では糖を含まない透析液を用いた透析において、同様の代謝を示す例があり飢餓状態であるとの報告はあるが、本例は150 mg/dl の糖濃度透析液を用いており透析液で糖濃度が保持されているにもかかわらず、飢餓状態を示している。この例は近年の透析条件では報告がない。そこでこの代謝を詳しく調べるために透析治療中のアミノ酸やインスリン値などあるいはサイトカイン類の測定を行う。また最近LC/MS/MS/をもちいて透析患者血中のビオチン測定に成功した。これを用いてビオチンとその代謝物の動態を調べ合併症としての痙攣との関係を調べる。さらにこれらのプロファイルを見る事で透析による除去を補う補液や治療法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理由: 1.緑の里クリニックの協力が得られた。これによって病因別の(糖尿病患者、非糖尿病患者)あるいは透析中のインスリンや栄養治療のあるなしの区分別の検体と情報を収集出来た。 2.透析中血漿と廃液のアミノ酸やIRIの検査により病態による代謝応答の違いを見出すことが出来た。 3.緑の里クリニックですでに透析中の補液の試みや、インスリン治療の試みを行っておりこの検体を入手し測定解析を行っている。 4.ビオチンとその代謝物の関係を調べるためLC/MS/MS系を開発し、代謝物と区別してビオチンを定量することに成功し、透析合併症である痙攣との関係を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病性透析患者の示す「低乳酸、高ケトン体症」という特徴について、さらに検体を収集しNMR測定を行い解析する。また透析導入期数年間の代謝応答の変化についても測定する。非糖尿病患者は透析中に乳酸の増加があるがケトン体は低下しておりこれらの相違を特定する。IRI, Cpeptide,サイトカイン類、アミノ酸の検査値を収集し代謝変化を検討する。これにより糖尿病に特有の蛋白異化の亢進について検討する。ビオチンと代謝物の定量については透析合併症の痙攣との関係をさらに検討する。
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Causes of Carryover |
論文投稿したが査読が遅れたため受理まで至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
投稿料は次年度に使用する。さらに今年度の成果をまとめ、学会発表と論文化を行う。日本透析医学会、HDF研究会、メタボロームシンポジウムなどに発表、また海外では欧州腎臓学会に発表するために旅費を使用する。これらの発表に対する質疑討論を活かして論文化する。英文校閲と投稿料を使用する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] A simple and rapid ultra-high-performance liquid chromatography-tandem mass spectrometry method to determine plasma biotin in hemodialysis patients.2016
Author(s)
Yagi, S., Nishizawa, M., Ando, I., Oguma, S., Sato, E., Imai, Y. & Fujiwara, M.
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Journal Title
Biomedical Chromatography
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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