2015 Fiscal Year Research-status Report
発作性夜間ヘモグロビン尿症における異常クローンの拡大を来す代謝異常
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15K15362
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 良子 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (00304048)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルカリホスファターゼ / ビタミンB1 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜上に存在するタンパク質の中にはグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質と呼ばれる一群のタンパク質があり、アルカリホスファターゼ(ALP)等150種以上知られており、重要な働きを担っている。GPIアンカーの合成と修飾に27個の遺伝子が必要であることがわかっているがこれらの遺伝子異常により全身でGPIアンカーが欠損すると胎生致死となる。従ってGPI欠損症のうち、劣性遺伝形式をとる先天性GPI欠損症は遺伝子変異により活性の低下した部分欠損症であり、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、造血幹細胞のPIGA遺伝子に後天的な体細胞突然変異がおこって発症する血液疾患で多くの場合、血球は完全欠損である。 PNHでは突然変異を起こした造血幹細胞はGPI欠損細胞となり正常細胞を凌駕して増殖するがその機序は明らかでない。GPI欠損細胞ではすべてのGPIアンカー型タンパク質が細胞表面に発現しないが、その1つであるアルカリホスファターゼ(ALP)による脱リン酸化はビタミンB6やB1の細胞内への取り込みに必要である。従ってGPI欠損細胞では細胞内のビタミンB6,B1の欠乏と、それに起因する代謝異常がおこっていると予想される。ビタミンB1の欠乏下ではαケトグルタル酸が蓄積し、これを基質とする脱メチル化酵素の反応が進んで腫瘍性増殖を来す遺伝子の発現が亢進することにより異常細胞の増殖を来すという仮説を検証する。そのための準備としてまずPIGA欠損の細胞株やモデルマウスを作製したので、そのPiga欠損血球のメタボローム解析を行い、αケトグルタル酸を中心にエネルギー代謝に関わる代謝産物を解析する予定にしている。またこれらからゲノムを抽出して、網羅的なメチル化サイトの定量解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではPIGA 欠損のBlymphoblast の細胞株やCRISPR/Cas9 の系を使ってPIGA をノックアウトしたHEK293細胞、あるいはPNH 患者の血液サンプルのメタボローム解析を行い、αケトグルタル酸を中心にエネルギー代謝に関わる代謝産物を解析する予定であった。そのためPIGA欠損細胞株を CRISPR/Cas9 の系を使って作製し、責任遺伝子PIGAを戻した細胞株も準備した。PNH患者の血液は入手が難しいので、細胞株やモデルマウスを使った解析を先行させ、エビデンスが得られてから患者サンプルの解析を行うことにした。モデルマウスについては血液・血管壁特異的にCreリコンビナーゼを発現するTie2CreのオスととPigafloxのホモのメスを交配して生まれたオスの血液細胞ではPigaがX染色体上にあるのでPigaの完全欠損となる。Tie2Creが血管壁や心臓にも発現している為になかなか完全欠損のオスが得られなかったが、最近になって順調に生まれるようになった。その血液のFACS解析では確かに、全血球でGPIアンカー型タンパク質の発現が欠損していた。今後上記のPIGA欠損株とモデルマウスの血球の代謝産物をメタボローム解析する予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作製したPIGA欠損細胞株やモデルマウスのPiga欠損血球のメタボローム解析によりαケトグルタル酸を中心にエネルギー代謝に関わる代謝産物を解析する。また、ゲノムを抽出して、網羅的なメチル化サイトの定量解析を行う。これらの結果をもとにPNH患者の末梢血の顆粒球をCD59(GPIアンカー型タンパク質)で染色しGPI欠損細胞と正常細胞をソーティングによって分取した血球のメタボローム解析とさらにゲノムを抽出して、メチル化サイトの解析を行う。これによりGPI欠損細胞において特異的に脱メチル化されている候補遺伝子が見つかれば、同じサンプルより抽出したRNAを使って、候補遺伝子の発現をqPCR法を使って解析する。発現の亢進が認められれば、これらの遺伝子をPNHモデルマウスに高発現させて、実際にGPI欠損細胞のクローナルな増加が再現できるか確認実験を行う。 細胞株やモデルマウス血球において予想される結果が得られない場合は、培養液やマウスの餌をビタミンB1やB6についてはリン酸化物のみを含むように組成を工夫して細胞表面のアルカリホスファターゼの発現の依存度をあげて解析する。
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Research Products
(3 results)