2015 Fiscal Year Research-status Report
マウスの指を場としたHox遺伝子の発現翻転機構の解明
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15K15387
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森 雅樹 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (10602625)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発生学 / ホメオチック遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、体の形を決める分子メカニズムの同定を目的として、マウス胎児の「指」の発生現象をモデルに解析を行っている。マウスの指には、極性に基づく3つの軸があり、前後軸、遠近軸、背腹軸の基軸性をもとに形態形成が行われる。しかし、形態形成過程の詳細はわかっていない。本プロジェクトでは、発生途中のマウスの指芽に特異的な発現パターンを示す転写因子に着眼し、研究を行っている。同転写因子のノックアウトマウスは、一定の頻度で自脚の欠損や指のパターン形成に異常が生じる。このことは、この転写因子が、基軸性に基づいたパターニングに基づいて、指の形態形成に寄与していることを示す。本研究では、同転写因子が極性に影響を与える機序をさらに詳細に検証するため、指の欠損のパターンや頻度について詳細な記録を行った。その結果、遺伝子変異の組み合わせによって、指の形成異常の頻度が有意に変化することがわかった。 本研究では、さらに詳細に分子機序を検討するため、パターニングに関与する遺伝子群とのクロストークについて検証を行っている。ホメオチック遺伝子は、脊椎動物に保存された前後軸に基づく形態形成のパターニング規定因子であるが、その制御機構ははっきりしていない部分が多い。ホメオチック遺伝子は、個々のクラスターに並ぶ遺伝子が順序通りに発現し、ある遺伝子で停止することにより、前後軸の情報が規定される。本研究では、ホメオチック遺伝子の逐次的発現が特定遺伝子で停止するメカニズムの解明を見据えている。この目的のため、同定した転写因子の機能解析を初めてマウス個体レベルで実施できるマウス系統について作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Hesr遺伝子ローカスにFLAGなどの塩基配列をCRISPR/CAS9システムを用いて、マウス個体にノックインすることに挑んだ。この試みがうまく行けば、「良い抗体がないため研究が進まない」という生物学研究の共通問題に解決策が打てる。どのような遺伝子でも良い抗体の存在する配列をノックインすれば良いからである。当初、マウスの産仔がうまく得られず難航したが、この目的に成功した。本マウスシステムを用いる研究に道筋が整ったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
導入されたタグ配列に基づき、同転写因子の機能解析を行っていく。同転写因子は、発現レベルが決して高くないため、検出に繊細な実験が必要かも知れない。ノックインタグに対する抗体を用いた発現解析や、免疫沈降実験を予定に沿って行っていく。
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Causes of Carryover |
マウス産仔数が当初計画よりも少なく、実験に使用可能な個体数を得るのに難渋を極めた。結果として本年度飼育可能であったマウス数は予定より少なくなり、また同マウスを用いて行う予定であった実験が行えなくなったことにより、予定通りの予算執行ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスの飼育・繁殖、および同マウスを用いた生物学・生化学実験に必要な試薬購入のために使用する。
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Research Products
(1 results)