2016 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソーム病患者幹細胞・疾患モデル生物を用いた発生異常・病態解明と創薬研究
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15K15389
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
下澤 伸行 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 教授 (00240797)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / 診断システム / iPS細胞 / ゼブラフィッシュ / ゲノム編集 / Zellweger症候群 / 神経発生異常 / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内唯一のペルオキシソーム病診断拠点を有する申請者が、ペルオキシソーム機能異常と病態との関係を明らかにするために、患者iPS細胞による組織・臓器レベルと、病因遺伝子欠損モデルフィッシュ作成による個体レベルの2つの解析ツールを融合させた斬新な発生異常・病態解明システムを確立し、ペルオキシソーム代謝機能全般を解明して、治療法の開発を目指している。Zellweger症候群は全てのペルオキシソーム代謝機能が先天的に欠失した究極のペルオキシソーム病で、中枢神経をはじめ全身の臓器に様々な障害を引き起こすが、その病態は不明である。さらにペルオキシソーム病診断機能を強化し、新たなペルオキシソーム病の探索も目指している。極長鎖脂肪酸やフィタン酸、プラスマローゲンなどのペルオキシソーム代謝異常と病態、発生異常との関連を明確にすることにより、オルガネラ病としての新たな展開も期待される。 28年度の成果として、診断機能の拡大については質量分析によるペルオキシソーム代謝機能の解析から次世代シーケンサを組み合わせた診断システムを確立し、新規や非典型例のペルオキシソーム病の診断探索を開始した。病態解明については、細胞レベルではZellweger症候群患者線維芽細胞由来のiPS細胞より神経系細胞への分化過程において形態異常が認められたため、検証実験からマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。さらにゲノム編集技術を用いたペルオキシソーム欠損モデル細胞を作成し、小胞体ストレスやミトコンドリア機能異常の解析によるオルガネラクロストークによる病態解明研究を行っている。個体レベルではゲノム編集技術を用いて作成した2系統のペルオキシソーム欠損モデルフィッシュにおける肝臓における臓器異常を確認し、解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
診断機能の拡大についてはGC/MSやLC/MS/MSの質量分析による脂肪酸をはじめとしたペルオキシソーム代謝産物の解析から、細胞・タンパク・遺伝子解析にペルオキシソーム関連パネルや全エクソーム解析による大規模遺伝子解析を組み合わせた診断システムを確立し、新規や非典型例のペルオキシソーム病の診断探索を開始した。ペルオキシソーム代謝異常と病態との関連を解明するため、細胞・組織レベルでのモデル系として、ペルオキシソーム欠損症患者由来のiPS細胞を樹立し、神経系に分化して発生異常の確認から、ゲノム編集技術を用いた疾患モデル細胞も樹立した。また個体レベルでのモデル系としてゲノム編集技術を用いたペルオキシソーム欠損モデルフィッシュも作成し病態解明に繋げている。以上の患者および疾患モデル系を確立したことにより最終年度の成果達成に繋げることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の29年度は、診断に関しては次世代ペルオキシソーム診断システムを用いた新規ペルオキシソーム病を探索し、オルガネラ病としてのペルオキシソーム代謝異常症の疾患概念を拡大する。病態解明に関しては、組織レベルの解析では27、28年度の研究成果の検証に引き続き、極長鎖脂肪酸やプラスマローゲンが単独に異常を来す疾患患者iPS細胞から分化誘導した神経系細胞の形態、ペルオキシソーム代謝機能から網羅的遺伝子発現解析をもとに、ペルオキシソーム代謝異常と神経発生異常や脱髄との関連を明らかにする。 個体レベルの解析としては、ペルオキシソーム欠損モデルフィッシュを用いてすでに明らかになった肝臓病変に加えて、神経病変を確認し、病態解明に繋げる。さらにダブル欠損や臓器特異的欠損フィッシュを作製して、個々のペルオキシソーム代謝異常と病態との関連を検証する。また予めペルオキシソームを可視化した野生型ゼブラフィッシュを用いて、正常発生過程におけるペルオキシソームの動態を観察するとともに、その個体からペルオキシソーム欠損フィッシュを作成し、発生過程におけるペルオキシソームの役割を明らかにする。さらに野生型ゼブラフィッシュの卵黄内にペルオキシソーム病で蓄積する極長鎖脂肪酸やフィタン酸を注入し、代謝産物の蓄積と病態との関連を解明する。
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Causes of Carryover |
ペルオキシソーム欠損モデルフィッシュの作成、病態解明において当初、予定していた神経発生異常の解析の前に肝臓における病変が明らかになったため、28年度は重点的に取り組み、神経系の解析を29年度に先送りした。 次世代ペルオキシソーム病診断システムの確立により新規ペルオキシソーム病候補患者が発見されたため、その病態解明が29年度に必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は次世代ペルオキシソーム病診断システムにより発見された新規ペルオキシソーム病候補患者の病態を解明、作成したペルオキシソーム欠損症患者由来のiPS細胞並びにモデルフィッシュを用いた神経発生異常の解明に必要な物品、人件費に使用する計画である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Ataxic form of autosomal recessive PEX10-related peroxisome biogenesis disorders with a novel compound heterozygous gene mutation and characteristic clinical phenotype.2017
Author(s)
Toru Yamashita, Jun Mitsui, Nobuyuki Shimozawa, Shigeo Takashima, Hiroshi Umemurad, Kota Sato, Mami Takemoto, Nozomi Hishikawa, Yasuyuki Ohta, Takashi Matsukawa, Hiroyuki Ishiura, Jun Yoshimura, Koichiro Doi, Shinichi Morishita, Shoji Tsuji, Koji Abe.
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Journal Title
J Neurological Sciences
Volume: 375
Pages: 424-429
DOI
Peer Reviewed
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