2015 Fiscal Year Research-status Report
I-cell病モデルマウスに対する幹細胞移植による治療戦略の創成
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15K15406
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
大倉 隆司 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (50183223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅澤 明弘 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (70213486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先天異常学 / ライソゾーム病 / 成育医療 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はI-cell病(ICD)というライソゾーム病の中でも治療法のない遺伝性多酵素欠損症を中心に病態の解析と幹細胞移植治療法の開発を試みるものである。I-cell病(ICD)は、多くのライソゾーム酵素に結合するライソゾーム移行シグナル、マンノース 6-リン酸残基の生合成を司る転移酵素遺伝子(GNPTAB)の遺伝的欠損を原因とする。本研究において、まずヒトICD患者fibroblastからiPS細胞を作製し、これより各種臓器細胞に分化させて臓器ごとに特徴的な代謝不全物質(複合糖質)の構造を明らかにする。これにより臓器ごとのライソゾーム酵素要求性が明らかになることから、それに最適の分解酵素分泌性を有するヒトES細胞をI-cell病のモデルマウスに対して移植し、その治療効果および総合的な安全性を解析・評価する。本研究は将来的にICDに限らず、現在根本的な治療法がない40種類以上のライソゾーム病に対しても有望な治療法を提示する事ができる。我々は、ICD患者fibroblastでは細胞中及び培養液中に高マンノース少糖と特徴的な糖ペプチドが蓄積していることを明らかにしている。同様の手法を用いて、各種ICD分化細胞を3H-グルコサミンで代謝標識し、細胞中に産生される3H標識代謝不全産物を各種クロマトグラフィー、各種酵素消化法などを駆使して構造を解析した。また、その他蓄積すると考えられる糖脂質、タンパク質等は免疫学的手法も用いて評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独立行政法人国立成育医療研究センターにはライソゾーム病の専門家が複数おり、本研究課題について常に連絡を取ることが可能である。本研究において必須となる動物実験施設、細胞・マウス等の研究材料、生化学的・病理学的解析等の装置、およびライソゾーム病の専門家、病理専門医を含む研究者はすべて揃っており、現在の研究環境は本研究を遂行するのに最適な状態であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度のin vitroの解析を継続して実施していく。これによりそれぞれの臓器ごとの分解不全状態が明らかにされれば要求されている酵素群も明らかになる。そこで最もその酵素要求に適した細胞を選択し、ICD-scidマウスの腹腔内に移植し、その効果を解析する。解析する項目は、寿命、体重変化、神経症状、酵素活性、移植した細胞の生着および酵素活性の組織内分布、移植に伴う副反応の有無等を総合的に定法(Nat Med. 13:439, 2007; J Clin Invest. 113:200, 2004等)に従い解析する。同時に尿中、血液中、組織中の代謝不全産物を定量的に解析し、その効果を判定する。
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