2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K15408
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 神経管閉鎖 / 先天性疾患 / メカノセンシング / 平面内細胞極性 / メカニカルフォース / 周産期疾患 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを初めとするほ乳類は、母体子宮内で発生・成長する。現在までに、子宮側からの圧力や胚内の組織間・細胞間で生じる力が、ほ乳類胚の発生にどのような機能を担っているのかほとんど解析されていない。そこで、本研究課題では、マウスをモデル実験動物として使用し、母体子宮と胚本体間や胚内の組織間・細胞間で生じる機械的な力が異常になることが、着床障害や先天異常の発症原因となっているという仮説の検証を行う。具体的には、マウス初期胚の発生過程における神経管閉鎖過程における胚内の細胞・組織間にかかる力や物理的な特性を計測することで、機械的力の異常が神経管閉鎖不全症候群などの先天性疾患の病態発症を引き起こす要因となり得るか検討する。 平成27年度は、神経管閉鎖現象に注目して下記の内容を明らかにした。1、いくつかの幹細胞マーカー(KLF5, SSEA4)を用いた発現解析を行うことで、神経管癒合時には表皮と神経の境界領域(背側中央部の外胚葉、神経褶領域)だけが神経にも表皮にも分化していない未分化な幹細胞様の性質を持っていることを明らかにした。2、この未分化幹細胞は、Sox9陽性の神経堤細胞の挙動とは異なることが分かった。3、この背側中央部の未分化幹細胞は、神経管閉鎖のタイミングでGrhl3陽性の表皮細胞へと分化する。この背側中央部の表皮細胞が持つ固有な弾性率が他の神経上皮細胞やその他の表皮細胞の性質とどのように異なるのか、またその力学的性質が神経管閉鎖運動に関わっているのか明らかにするため、Grhl3陽性の表皮細胞へ効率よく分化させるin vitroのES細胞分化系を開発した。4、更に、表皮細胞をin vitroでES細胞から誘導後、細胞の硬さ(弾性率)を走査型プローブ顕微鏡を用いて計測する系を確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究計画の1年目を終えた時点であるが、上記概要に記載したように神経管閉鎖過程の表皮細胞の物理的な役割を解析する実験系を確立することができた点、概ね研究計画に沿って研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、Grhl3転写因子は、神経板境界(神経褶)領域で発現し、神経管閉鎖運動と連動して、表皮化に働くことをマウス個体レベルの表現型解析から明らかにしている。この正中線上のGrhl3陽性の表皮細胞によって順々につぐまれて神経管が閉じていくことから、Grhl3陽性表皮細胞は他の周辺細胞とは異なる固有の物理的な特性を持っていることが考えられる。そこで、平成27年度までに樹立した培養系を用いて、表皮細胞分化に関わる転写因子であるGrhl3を過剰に発現させた細胞がどのような特性を持つのか走査型プローブ顕微鏡などで計測する。また、正常なマウス胚からシート状に神経管閉鎖中の上皮層を切り取り、神経上皮、表皮、その境界部分がどのような力学的性質を持っているか走査型プローブ顕微鏡を用いて計測することが可能か検討したい。以上の結果から、神経管閉鎖過程においてその領域や組織ごとに力学的特性がどのように異なっているのか明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度に関しては、購入予定の物品を購入しなくても解析を遂行できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降の実験補助員の謝金や研究遂行に必要な物品費などとして使用する予定である。
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