2017 Fiscal Year Research-status Report
Studies on roles of mechanical forces in the pathogenesis of perinatal diseases
Project/Area Number |
15K15408
|
Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 発生・分化 / メカニカルフォース / 周産期疾患 / 着床障害 / 先天異常 / 哺乳動物胚 / 物理的特性 / ヤング率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ほ乳類胚は、母体子宮内で発生・成長する。現在まで、子宮側から胚への力や組織間・細胞間で生じる力が、胚発生にどのような機能を担っているのかほとんど解析されていない。本課題では、マウスをモデルに、子宮と胚の間や胚内の組織間・細胞間で生じる機械的力の異常が、着床障害や先天異常の発症原因となっているという仮説の検証を行う。具体的には、子宮内膜と胚の相互作用や神経管閉鎖運動において、細胞・組織間にかかる力や物理的特性を計測することで、力の異常が病態を引き起こす要因となり得るか検討する。今年度は、下記の内容を明らかにした。 神経管閉鎖過程で背側正中線上の表皮細胞の物理的特性が異常になることで、神経管閉鎖不全を発症する可能性を検討するため、野生型マウス胚と神経管閉鎖不全を発症するマウス胚を対象に背側中央表皮部分のヤング率を原子間力顕微鏡を用いて直接計測した。その結果、神経管閉鎖過程の野生型マウス胚の表皮細胞表面のヤング率は、平均約8.1kPaに対して、神経管閉鎖不全を示すマウス変異胚では、2.8kPaであった。つまり、神経管閉鎖不全胚では表皮細胞が脆弱になっていることが分かった。これらの結果から、より強固な表皮組織が形成できないと神経管閉鎖不全を発症することが示唆された。 マウス胚と子宮内膜の境界には、ライヘルト膜(ヒトのヒューザー膜)が存在している。本膜の構成成分であるジストログリカンを欠損した変異マウスを導入し、表現型を解析した。結果、本欠損胚では、胚性致死を示すが、個体毎に致死になる時期にばらつきがみられた。更に、本欠損変異マウス胚では、一定頻度でライヘルト膜に破損が見られ、そのような変異胚では、胚全体が大きく変形することが示唆された。これらの結果から、子宮内膜と胚との境界にライヘルト膜が正常に形成されないと機械的な力が原因で致死となることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記概要に記載したように概ね研究計画に沿って研究を遂行できている。 細胞間・組織間にかかる機械的力を計測することに成功し、機械的力が先天異常や着床障害の一因となり得るデータを得つつある。 上記研究成果の一部については現在論文投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞間・組織間にかかる機械的力を発生段階を追って計測する。より安定して細胞・組織の物理的特性を計測する条件を開発することで、神経管閉鎖不全症候群や着床障害が発症する力学的な条件を見つけたい。
|
Causes of Carryover |
[理由] 平成27年度に遂行予定であった実験補助員による実験が、変更になったことなどに起因している。平成28年度以降についてはおおよそ予定通りに使用している。 [使用計画] 平成30年度は、投稿中論文のrevision実験を含め、研究開始当初は予定していなかったより精度の高い定量的な解析実験に必要な物品費に使用する。また、研究成果発表に必要な費用(その他、旅費)として使用する。
|
Research Products
(6 results)