2016 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞をとりまく腫瘍低酸素環境ダイナミクスからの新たな放射線増感法への展開
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15K15442
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Research Institution | Southen Tohoku Research Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
高井 良尋 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, センター長 (50107653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 勝己 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, 診療所長 (60623767)
佐藤 まり子 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (30645263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素細胞 / 癌幹細胞 / 放射線増感 / 定位放射線治療 / 細胞内活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)X線照射後の再酸素化遅延によるCSC分布変化;in vitro(髙井、佐藤);前年まで実施していたフローサイトメーターQaunta SCの優位な機能であるCSC集団と考えられているSP細胞分画の分離が幾度のプロトコル変更でも方法の最適化に至ることが適わなかった。そこでこれに代わって、同様にCSC集団と考えられているCD133陽性細胞分画の分離をCD133陽性細胞の割合が多いといわれているT98Gヒト膠芽腫細胞株で実施した。CD133陽性細胞分画は72時間の慢性低酸素条件でその割合が有意に増加することが明らかとなった。これによりT98Gが本研究課題におけるCSC分画としての評価に適した細胞株であることが判明した。
2)低酸素下T98Gの細胞特性;合わせて低酸素環境におけるT98Gの細胞特性を評価した。低酸素化の細胞の代謝について評価する目的で、アミノ酸代謝を利用したフェニルアラニン誘導体BPAを利用して代謝の変化を検討した。BPAはホウ素中性子捕捉療法の臨床利用される薬剤でもあり、アミノ酸代謝の性質からBNCT治療に対する腫瘍の治療抵抗性も合わせて検討することを目論んだ。低酸素環境下72時間での培養ではT98GはBPAの取り込みを有意に減少させた。またこの変調は酸素条件が21%、10%、3%、1%と低下するにつれて直線的に増強変化した。これよりホウ素中性子捕捉療法においても低酸素環境が腫瘍の治療抵抗性の本質に起因していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験項目の一部に実験プロトコルの最適化で対応しきれなかったことがあり、使用する細胞株の変更とキーとなるCSC(癌幹細胞)分画の評価方法の検討という、非常に重要且つ慎重な検討を要す箇所が生じてしまったため、これに多大な時間を要す結果となった。このため実験系の基礎部分の再確立を要したため、これを基盤に実施しうるほとんどの実験項目を同時並行で実施できない状況であり、大幅な遅延を生じた。また同実験項目を担当する研究代表者の所属先が変わったため、これまでの実験実施環境へのアクセスの問題で、更に遅延を生じる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究期間を1年延長して実施を継続する。使用する細胞株T98Gのvalidityおよびそれに適したCSC(癌幹細胞)の評価方法が確認されたので、これに合わせて、以下の通り研究計画を1年の期間で実施可能な内容に調整して実施する。 1)X線照射後の再酸素化遅延による細胞死誘因(廣瀬、佐藤);10Gy×3回のX線照射を低酸素化24時間間隔ごとに施行し、Annexin-V染色、TUNEL assayによりアポトーシスを検出、フローサイトメトリー解析を行う。caspase-3/7活性化、Fasおよびp53活性化の有無を確認する。β-ガラクトシダーゼ活性により老化様細胞死について検討する。アポトーシスおよび老化様細胞死を呈する細胞の割合変化を解析する。オートファジー特異的タンパク質LC3抗体よりオートファジーの機能活性化につき検討する。 2)X線照射後の再酸素化遅延によるCSC分布変化;in vitro(髙井、佐藤);CSC細胞表面マーカーCS133の発現によりCSCの細胞比率を定量する。同時に細胞内ROSを示すDCFDAやAnnexin-V-FITCを同時多重染色し共発現の違いを検討する。長時間細胞分裂をしないPKH26GL(赤)で染色後維持された細胞をCSCと同定し、低酸素化で照射し、低酸素の遷延に伴うCSCからの分化・癌構成細胞動員動態を観察する。FITC結合細胞表面マーカーで染色し、新たにCSCから分化した細胞割合等を検討する。分裂しないで残存した細胞と、分裂を繰り返し蛍光強度が低下した細胞をさらに分離し、低酸素下および通常酸素下で培養を実施した際の分裂を可視化し比較する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の実験計画が遅延したため、物品購入、旅費の支出を先延ばしすることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に行う実験用の消耗品および成果発表に係る旅費の支出を予定している。
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