2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘパラナーゼを分子標的とする放射性ヨウ素標識薬剤の開発
Project/Area Number |
15K15462
|
Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
向 高弘 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30284706)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | がん / 放射性薬剤 / ヘパラナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腫瘍特異的に発現し、腫瘍の組織浸潤性、転移に重要な役割を果たしている酵素、ヘパラナーゼに着目し、ヘパラナーゼに特異的に結合して腫瘍の悪性度、転移性に関する質的診断を可能とする新規放射性ヨウ素標識化合物の開発を計画した。そこで、ヘパラナーゼの選択的阻害剤である低分子化合物OGT2115の構造を基盤に、ヘパラナーゼへの結合活性維持と脱ヨウ素化反応に対する安定性を考慮し、OGT2115のBr基に放射性ヨウ素を導入した化合物(1)を設計した。コールド体は、4-hydroxy-3-nitrophenylacetic acidを出発原料として、塩酸メタノールによるメチルエステル化とPd-Cによるニトロ基の水素化にて4-amino-4-hydroxyphenylacetic acid methyl ester (4)を収率89%で得た。次に、p-ニトロ安息香酸との環化反応とそれに続く水素化にて2-[(4-amino)phenyl]-5-benzoxazoleacetic acid methyl ester (6)を収率25%で得た。6と(E)-3-(4-iodophenyl)acryloyl chlorideの求核置換反応によりエステル体を得た後に、LiOHにて加水分解し、コールド体1を収率86%で得た。標識前駆体は、6と(E)-3-(4-boromophenyl)acryloyl chlorideの求核置換反応によりエステル体 (9)を収率94%で得た後に(Bu3Sn)2を反応させ、トリブチルスズ体10を収率16%で得た。放射性ヨウ素標識体1の合成は、10を標識前駆体としたスズ-ヨウ素交換反応において、エステル体[I-125]16を放射化学的収率38%で得た。そして加水分解を行い、[I-125]16から収率98%で[I-125]1を合成することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘパラナーゼの選択的阻害剤であるOGT2115のBr基に放射性ヨウ素を導入した化合物を設計し、出発物質から6ステップでコールド体の合成に成功した。標識前駆体については、放射性ヨウ素の導入が容易であり、その後の分離精製に有利であると考えられる、トリブチルスズ体を設計し、その合成に成功した。放射性ヨウ素標識体の合成は、スズ-ヨウ素交換反応により比較的収率よく合成できたことから次年度において、合成した放射性ヨウ素標識体のインビトロ評価およびインビボ評価によってヘパラナーゼを標的分子とした放射性薬剤としての有用性を検証できるものと期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
合成したコールド体のヘパラナーゼ阻害活性評価は、ELISA 法を用いOGT2115と比較する。また、ヘパラナーゼを高発現している細胞を用いて、浸潤阻害能を評価する。インビトロでの安定性は、放射性ヨウ素標識体を緩衝液およびマウス血しょう中にてインキュベートし、経時的にHPLC にて化学形を分析することにより評価する。以上の段階で阻害活性や安定性に問題がある場合は、放射性化合物の再設計・再合成を行う。ヘパラナーゼの発現が認められた腫瘍細胞への集積性については、時間依存性、濃度依存性についても調べるとともに、OGT2115 を含めいくつかの薬物と併用し、腫瘍細胞への集積に対するヘパラナーゼ特異性を検証する。標識体の体内動態については、健常マウスに投与し、その体内放射能分布を経時的に評価する。放射能の排泄経路、代謝過程も併せて検討し、放射性ヨウ素標識体の基本的な体内動態特性を把握する。さらに、ヘパラナーゼの発現が認められた腫瘍細胞を移植したヌードマウスにおける放射性ヨウ素標識体の分布を評価する。また、腫瘍切片を作製し、オートラジオグラフィーにより、腫瘍内分布を詳細に解析し、ヘパラナーゼの腫瘍内分布と比較検討する。以上の評価を通して、合成した放射性ヨウ素標識体について、ヘパラナーゼを標的分子とした放射性薬剤としての有用性を検証する。
|