2015 Fiscal Year Research-status Report
光スイッチ遺伝子発現制御による非侵襲的な膵癌治療法の開発
Project/Area Number |
15K15484
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 なつみ 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (30624358)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光制御 / 遺伝子発現 / ルシフェラーゼ / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は浸潤傾向や脈管侵襲傾向が強く、予後が極めて不良な疾患の一つであり、非侵襲的な治療法の開発が急務である。本研究は遺伝子発現制御による膵癌治療法の開発を目的とし、その基盤技術として光照射が遺伝子発現制御を可能とする光スイッチシステムの開発に着手した。光スイッチシステムは光スイッチとなるベクターおよび光スイッチの受け手となるベクターの作製が必要である。光応答が可能なタンパク質としては、生体透過性の高い波長を使用可能とするためにシロイヌナズナのフィトクロムを用いた。VP16の転写活性化ドメインおよびGAL4のDNA結合ドメイン・ダイマー形成ドメインを、フィトクロム遺伝子とともに発現させ、融合タンパク質となるようにベクターをデザイン・作製した。作製したベクターはIRES (Internal ribosome entry site)によりGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子を発現することで、生細胞へのベクター導入の有無を蛍光観察により確認可能とした。また、光照射により遺伝子発現制御されるベクターは、GAL4のDNA結合配列であるUAS (Upstream Activating Sequence)を保有し、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するベクターとした。これにより、遺伝子発現の有無が発光測定で評価可能となった。光スイッチの応答性については、培養細胞に遺伝子導入し、光照射の条件検討と併せて検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光照射が遺伝子発現制御を可能とする光スイッチシステムの開発を行った。 1) 光スイッチベクターの作製 光照射による遺伝子発現制御のスイッチとしては、シロイヌナズナのフィトクロムを用いた。DNA結合ドメインおよびダイマー形成ドメインとしては、GAL4のドメインを選択し、転写活性化ドメインとしてはVP16の転写活性化ドメインを選択しベクターに挿入した。これらの遺伝子発現は融合タンパク質となるようにデザイン・作製した。作製したベクターはIRES (Internal ribosome entry site)と蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を有しており、生細胞へのベクター導入の有無を蛍光観察により確認可能とした。 2) スイッチの受け手となるベクターの作製 光照射により遺伝子発現制御されるベクターとしては、GAL4のDNA結合ドメインの結合配列であるUAS (Upstream Activating Sequence)を保有するベクターを選定した。光照射により光スイッチシステムがONとなったことを確認するため、発現制御される標的遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子とし、作動評価方法を発光測定とした。今後はルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光の強度や波長を考慮し、容易に評価可能なようルシフェラーゼの種類を検討する予定である。上記の二つのベクターの作製により、光スイッチシステムの枠組みは完成したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した光スイッチシステムの応答性の有無を検証するために、フィトクロムが核移行するために必要な遺伝子を発現するベクターの作製を行う。作製した光スイッチベクターは、必要に応じて改良を行う。光スイッチシステムの応答性の検証は遺伝子導入効率の良い培養細胞に遺伝子導入し、ルシフェリン・ルシフェラーゼによる発光測定により評価する。作製したベクターを導入した細胞への光照射は、波長および強度・時間等の条件検討、光照射装置の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属研究機関の変更により、研究の中断が生じた期間に研究費を使用していないため。また、研究期間の変更に伴って準備する物品の変更が生じたため、次年度に繰り越すことで必要な消耗品に使用可能となるよう配分したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養および光照射等のための消耗品の購入に使用する予定である。
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