2015 Fiscal Year Research-status Report
可視化システムを用いた膵癌幹細胞の特異的分子同定と臨床病理学的解析
Project/Area Number |
15K15492
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上田 浩樹 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (40750071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 真二 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30253420)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / DNAメチル化 / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌難治性の原因の一つはその多様性にある。癌組織にも幹細胞性を示す細胞群の内在が示されheterogeneityの根源となることが報告されているものの、その動態や局在には不明な点が多い。本研究では、膵癌と膵神経内分泌腫瘍(以下PNET)の幹細胞性の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。 我々はユビキチン非依存のプロテアソーム標的部位であるODC-C末端37アミノ酸(degron sequence)と蛍光蛋白(ZsGreen)の融合遺伝子をウイルスベクターを用いてヒト膵癌細胞株に導入した。セルソーターによりZsGreen陽性細胞(以下CSChigh)を抽出することで様々な実験への応用が可能となった(Gastroenterology 2012)。膵癌のCSChigh とCSClow細胞で遺伝子発現とDNAメチル化およびヒストン修飾変化の解析を進めており、DCLK1遺伝子の発現がCSChigh で高いことを報告した(PLoS One 2016)。既に両細胞群でメチル化を網羅的に調べており、発現との比較検討を進めている。同様の可視化システムをPNET細胞株にも導入し、PNETの癌幹細胞モデルとしてCSChighを抽出した。 またPNETで遺伝子変異の頻度が高く、変異群で予後が悪いことが報告されているエピゲノム構成因子X(Gastroenterology 2014)について、幹細胞性との関連性を調べることとした。当科の臨床検体において遺伝子Xの変異症例を複数認めた。現在、PNET細胞株を用いてsiRNA導入による遺伝子Xのノックダウンを行い、機能解析を進めている。ノックダウン株にてスフェア形成能が増加し、遺伝子Xが癌幹細胞性に関わる可能性が示唆された。ノックダウン株とコントロール株でのDNAマイクロアレイを行いて網羅的遺伝子発現解析を行い、遺伝子変動を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌幹細胞解析については発現とメチル化の統合解析を進めている。PNETの癌幹細胞モデルに関してはCSChighを樹立出来たことで、膵癌の癌幹細胞モデルと同様にIn vitro, In vivo解析での検証が可能となった。 遺伝子Xの機能解析においては、遺伝子XをsiRNAでノックダウンすると、スフェア形成能が増加し、遺伝子Xが癌幹細胞性に関わる可能性が示唆された。ノックダウン株とコントロール株でのDNAマイクロアレイを行いて網羅的遺伝子発現解析を行い、遺伝子変動を同定出来たことで遺伝子Xの機能解析に向けたさらなる検証が可能となった。 進捗状況としては予定通りであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌幹細胞では、遺伝子発現とメチル化の統合解析を進める。既にDCLK1発現がCSChighで高いことが明らかになったので、メチル化との関与も検討する。PNETの癌幹細胞モデルに関してはIn vitroでCSChighとCSClowに対して、膵癌の実験系同様に遺伝子発現やDNAのメチル化解析を行う。結果を統合し、PNETの幹細胞特異的遺伝子候補を抽出し、Western blottingおよび免疫細胞染色によって蛋白発現および局在を解析し特異的分子群を同定する。In vivoではNODSCIDマウスにCSChigh細胞を接種し、膵腫瘍モデルを作成する。CSChigh細胞とCSClow細胞での腫瘍造成能力を比較検討する。 遺伝子Xの機能解析に関しては、DNAマイクロアレイを用いたノックダウン株とコントロール株での網羅的遺伝子発現解析で同定出来た遺伝子変動につき、エピゲノムの観点からその制御機構の解明を進める。更に、CRSPR/Cas9によるゲノム編集を行うことで、遺伝子Xのノックアウト株を作成する。ノックダウンおよびノックアウト株を用いてクロマチン免疫沈降を行い、遺伝子Xの下流標的遺伝子の発現変動におけるヒストン修飾の関与を検討する。またIn vivoでNOD/SCIDマウスに遺伝子Xノックアウト細胞を接種し、膵腫瘍モデルを作成する。ノックアウト細胞と野生型細胞での腫瘍造成能力を比較検討する。
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Causes of Carryover |
本研究で用いるセルソーティングや、今後使用しうる生体内蛍光イメージング、マイクロCTは所属機関に整備されているものや共同研究施設のものを使用出来る。RNA-seqやメチル化などのゲノム・エピゲノム解析機器は非常に高価であるため、購入は考えていない。当初外部委託する予定であったDNAマイクロアレイを本研究室で行えたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
自施設において不可能な作業工程やデーター解析に関しては外部委託で行うため費用が必要である。また特異抗体などの分子生物学試薬、細胞や組織の分子生物学的解析に必要なプラスチックウェア、癌幹細胞群の培養や生体ニッチ解析に必要な細胞培養試薬、実験用動物等のために主に消耗品費が必要である。
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