2016 Fiscal Year Annual Research Report
Identification and functional analysis of nuclear pore complex components that function to transport beta-catenin between cytoplasm and nucleus
Project/Area Number |
15K15493
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
源 利成 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (50239323)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸がん / β-カテニン / 核移送 / 核膜孔複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸発がんと進行過程を推進するWnt経路活性化は,その指令伝達因子β-カテニンが核に移入し,腸型転写因子Tcf7L2(Tcf4)と協働することにより全うされる.しかし,分子内に核移行モチーフを持たないβ-カテニンが細胞質と核を往来する仕組みは明らかではない.本研究は,分子の核移送や排出に機能する核膜孔複合体因子(nucleoporins: Nups)とβ-カテニンの発現の関連性,相互作用や機能解析を行い,β-カテニンの細胞質-核間移送に機能するNup(s)の同定を試みる.また,大腸がんにおけるこれらNup(s)の発現や役割りを検討する.そして,Wnt経路活性化の根幹をなすβ-カテニン核移行のメカニズム解明の端緒を拓くことに挑戦する.この取組みは大腸がんの分子病態の理解とともに,個体発生や分化など多様な生命現象の研究へ応用が期待される. ヒト大腸がん細胞SW480とHCT116を対象にβ-カテニンとTcf4に対する抗体で免疫沈降する複数のNupsを同定した.そのなかに,前年に同定したNupXが含まれていた.NupXが核膜に発現しているがん細胞ではβ-カテニン核集積は少なく,同じ細胞でNupXの発現を抑制するとβ-カテニンの細胞質集積と核局在が顕著になった.これに伴い,β-カテ二ン/Tcf4経路の分子発現が亢進した.ヒトがん組織の解析により,腫瘍におけるNupX発現は大腸がんの病期と逆相関を示した.以上の結果より,NupXはβ-カテニンの核排泄に作用し,大腸がんのWnt経路には抑制的に作用することが示唆された.当初の目的の1つであったβ-カテニンの細胞質から核移行に作用するNupは,この研究期間に同定できなかった.
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