2015 Fiscal Year Research-status Report
エタノール放出発熱ポリマーによる微小スリガラス状肺癌の局所硬化治療法の基礎的検討
Project/Area Number |
15K15517
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
島田 順一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60315942)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺癌 / 微小病変 / 高齢者 / 縮小手術 / 代替療法 / 樹脂 / 発熱硬化 / エタノール放出 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者や合併症を有する患者に対する消極的縮小手術や放射線治療などの代替治療法として、エタノール放出ポリマーによる局所硬化治療法の確立を目指し基礎的件検討を行った。これは、微小肺癌に対し経皮的にポリマー樹脂を注入し、重合反応の過程の熱や生成物で癌細胞の死滅を目指す治療法である。まず、研究協力者の東レ・メディカルと本法で用いる樹脂の開発を行った。従来経皮的肺マーキングで用いられている20Gよりも小さい穿刺針を用いて肺に注入可能な、粘度が低く、注入後は生体内で緩徐に硬化し血管内に拡散されない、かつ、CTガイド下での注入を想定しX線非透過性となるように樹脂を設計した。この樹脂を用いて、動物実験で生体内(正常肺)での硬化樹脂の分布、組織反応について検証した。SDラットを全身麻酔下に開胸しラット肺に樹脂を注入した。開発した2液からなる樹脂の割合により、注入後2~5分程度で樹脂が肺内で硬化することが確認できた。樹脂注入後のラット肺を摘出し、HE染色を用いた組織学的評価を行ったところ、注入した樹脂は期待通り既存の肺胞構造に充満するように分布し、非注入部の残存肺胞構造と明瞭に区別しえた。一部に圧排性と思われる肺胞壁の破壊を伴う部位も散見した。樹脂注入後の経時的な組織反応を観察すると、注入直後に急性の反応は乏しく、14日、28日と経過する中で間質の線維化など異物反応と思われる反応が確認できたが、樹脂と接する肺胞上皮細胞の壊死は確認できなかった。注入した樹脂の空間分布および画像的な評価を行うために、同様の実験で得た樹脂注入ラット肺をハインツマン法で固定し、名古屋大学の森健策教授と共同でマイクロCTを用いた解析を行った。マイクロCT画像上で樹脂は高CT値の領域として同定でき、肺胞に樹脂が充満したHE標本に近い像が得られた。注入部位から少し離れた気道もしくは肺胞内に樹脂の散布像が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した樹脂の生体内での反応を確認するために、次年度に予定していたラットを用いた動物実験を予定より早く開始している。この結果からフィードバックして、さらに樹脂の改良を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットを用いた動物実験で得られた硬化樹脂の分布や組織反応の結果をフィードバックし、本提案手法の遂行に必要な粘性や組織障害性などの要件を満たす樹脂の開発・改良を進めていく。注入樹脂による組織反応の評価法のひとつとして、造影剤を用いたマイクロCTによる解析方法も検討していく。小動物(ラット)での樹脂注入部位の硬化および組織障害性が確認できれば、大動物(ブタ)での検証へ進んでいきたい。
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Causes of Carryover |
本提案手法に関する樹脂の開発およびそれに伴う動物実験に関する費用を予定していたが、実験結果からフィードバック後に、初年度最終で実施を予定していた樹脂の改良およびそれに伴う動物実験が年度内に完了しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は、上記のとおり予定していた樹脂の改良および動物実験を行い、その費用にあてたい。
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