2015 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞はなぜ糖を過剰に必要とするのか?の根本疑問にグリオーマ幹細胞研究から挑む
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15K15522
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北中 千史 山形大学, 医学部, 教授 (70260320)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経膠芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己複製能・腫瘍創始能といったがん幹細胞を特徴付ける形質を喪失させる手法の開発はがん根治実現のカギを握ると考えられるが、こういったがん幹細胞に特徴的な形質が如何なる機序で維持されているかはいまだ不明な点が多い。これに対して我々は「がん幹細胞の糖代謝活性が幹細胞形質維持調節に重要な役割を担っている」という新たな仮説を着想した。本課題は、前年度挑戦的萌芽研究課題「がん幹細胞運命決定の糖代謝レオスタット仮説実証を通じて膠芽腫根治モデル創出に挑む」に引き続き、この仮説を膠芽腫をモデルに実証すると同時にがん幹細胞糖代謝標的治療を膠芽腫幹細胞分化誘導法やbulk tumor control(非幹細胞制御)法等と理論的に組み合わせることによって膠芽腫根治の前臨床モデルを創出することを最終的な目標として実施している。これまでに我々は解糖経路阻害がin vitroで膠芽腫がん幹細胞の諸特性を抑制するとともに、in vivoでも膠芽腫がん幹細胞による腫瘍形成を抑制することを明らかにしている。引き続きこのような解糖経路阻害により幹細胞性が失われる機序について検討を行ったところ、解糖経路阻害により細胞内ROSレベルの上昇が誘導され、これが幹細胞性を抑制している可能性を示唆する結果が得られた。そこで細胞内ROSの解糖経路阻害による幹細胞性抑制における役割を検討するとともに、解糖経路阻害により細胞内ROSレベルが上昇する機序について検討を行った。前者については、少なくとも細胞内ROS上昇により幹細胞性喪失がおきることは確認されている。後者については、グルタチオンを介した制御の可能性が示唆されたため、現在グルタチオン代謝に深く関わっているグルタミン代謝も含めて俯瞰的な視点から検討を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の仮説の中心となっている解糖経路阻害による幹細胞性喪失へのROSの関与を示唆するデータが順調に得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
解糖経路阻害による細胞内ROSレベル上昇の機序に関して示唆的な知見が得られているので、この点をさらに詳細に解析する。また、細胞内ROSレベルは糖代謝単独ではなく、グルタミン代謝と協調することで制御されていることも明らかになりつつある。これらの新規知見についての解析結果を加えることで、本研究課題からより大きな成果を生み出すことが期待される。
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Causes of Carryover |
研究過程において申請時には予見できなかった新知見が得られ、この新知見に関する検討を十分に行うことにより得られると期待される情報に基づいて当初予定の研究を実施するほうが、当初予定の研究を拙速に実施するよりも遥かに研究費の有効活用が可能であり、有意義な知見が得られると考えられたため。 と同時に、科研費の効率的かつ有効利用を最大化するため、研究課題で行う予定の実験のうち、研究室に既存のマテリアルを使用することで推進可能なものは極力既存のマテリアルを使用することで実施する努力をしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新知見に基づいて今後得られるであろうと期待される新情報を踏まえつつも方法論的には当初計画どおりに研究を進める予定であり、そこで必要とされる一連の実験を実施するために研究費を使用する。
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Research Products
(2 results)