2015 Fiscal Year Research-status Report
Rp58を介した筋サテライト細胞の分化制御機構の解明
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15K15544
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
淺原 弘嗣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70294460)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筋サテライト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋は運動機能における動力源であり、組織幹細胞による再生メカニズムとMyoDに始まる発生分化転写制御システムの研究モデルとして長らく医学・生物学をリードしてきた。我々は、筋分化に必須の転写因子としてRp58を同定、さらに、ヒト筋芽細胞の分化系を用いたゲノムワイドなメチル化解析で、Human myoblastの分化過程において筋関連遺伝子の多くでpromoter領域のDNAメチル化レベルの上昇が見られることを発見し、筋分化過程においてde novo DNAメチル化が分化に重要な遺伝子発現制御を担っている可能性を示した。また、Rp58に認識されるプロモーターが効率にDNAメチル化を受けることを明らかにした。哺乳類におけるde novo DNAメチル化酵素にはDnmt3aおよびDnmt3bが知られており、これらの遺伝子をknock-outすると正常な発生が進まなくなることからde novo DNAメチル化は発生に必須であると考えられる。造血幹細胞においてDnmt3aをknock-outすると分化が障害されることが報告され、体性幹細胞の分化においてもde novo DNAメチル化が必須であることが示唆されているが筋前駆細胞における同様の報告はない。本研究では、さらに、DNMT3Aコンディショナルノックアウトマウスを用いて、DNAメチル化の筋サテライト細胞における筋再生を促す機能を解析し、Dnmt3aを欠損した骨格筋幹細胞ではCDK inhibitorであるp57Kip2が高発現しており細胞増殖が障害されていることを見出した。Dnmt3aはp57Kip2の発現調節を介して骨格筋幹細胞の増殖を制御し骨格筋の再生を制御する一因となっていると考えられ、エピジェネティックスレベルでの筋分化・再生の分子機序の一部を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
哺乳類においてはDnmt3aとDnmt3bの働きによりDe novo DNAメチル化が行われる。生殖細胞やES細胞におけるDNAメチル化については多くの報告があり、正常な発生にDNAメチル化が不可欠であることが知られているが、体性幹細胞における報告は限られており、その機能は解明の余地がある。今年度は、骨格筋幹細胞におけるDNAメチル化の意義を明らかにするため、骨格筋前駆細胞で発現するPax7あるいはPax3依存的にDnmt3a遺伝子を欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作成し、筋再生の観点から研究を進めた。結果、Dnmt3aを欠損した骨格筋幹細胞ではCDK inhibitorであるp57Kip2が高発現しており細胞増殖が障害されていることを見出した。Dnmt3aはp57Kip2の発現調節を介して骨格筋幹細胞の増殖を制御し骨格筋の再生を制御する一因となっていると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
Rp58のターゲットをゲノムワイドに探索するため、ChIP シークエンスを行う。TALEN・CRISPR法を用いて、Rp58の5’にFlagタグをノックインしたマウスを作成し、FlagタグでRp58の結合するクロマティン断片を免疫沈降し、DNAを次世代シークエンサーを用いてシークエンスすることで、Rp58が結合しているプロモーターを同定する。同定された候補遺伝子を中心に、Rp58に直接制御されるかどうかにつき、1)プロモーターアッセイ、 2)ゲルシフトアッセイ、 3)クロマチン免疫沈降、によって、解析を行い、さらに、4)Rp58の過剰発現による候補遺伝子の発現をリアルタイムPCRで確認し、5)KOマウスにおける未分化筋芽細胞における各々の遺伝子の発現の確認を行う。6)さらに、直接ターゲットであると確認された遺伝子につき、その遺伝子の機能をC2C12細胞の筋分化誘導系においてTALEN/CRISPRで遺伝子変異を導入することで解析する。
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Causes of Carryover |
マウス産仔数が当初計画よりも少なく、実験に使用可能な個体数を得るのに難渋を極めた。 結果として本年度飼育可能であったマウス数は予定より少なくなり、また同マウスを用いて行う予定であった実験が行えなくなったことにより、予定通りの予算執行ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスの飼育・繁殖、および同マウスを用いた生化学・生化学実験に必要な試薬購入のために使用する。
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Research Products
(8 results)