2015 Fiscal Year Research-status Report
慢性疼痛の遺伝子治療を目指した知覚神経指向性ウイルスベクターの開発
Project/Area Number |
15K15572
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山田 健太郎 大分大学, 医学部, 助教 (70458280)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 天鎬 北里大学, 獣医学部, 准教授 (50383550)
野口 賀津子 南九州大学, 健康栄養学部, 助手 (00760943)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 慢性疼痛 / 遺伝子治療 / レンチウイルスベクター / 狂犬病ウイルス / G蛋白質 / N型糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性慢性疼痛は患者のQOLを著しく低下させ、社会経済的損失をもたらす疾患であるが、鎮痛剤等の効果は低く、決定的な治療法がない。これについて、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療が、低侵襲性・長期効果発現の観点から着目されている。最近我々は狂犬病ウイルス野外株(1088株)が知覚神経指向性を示すことを見出した。このウイルスの細胞指向性はウイルスG蛋白質によって規定される。そこで本研究では、1088株G蛋白質を纏ったレンチウイルスベクターを作製し、慢性疼痛遺伝子治療用ベクターとしての適合性について検証する。 本研究を行うために、ある増殖力欠損(SIN)型レンチウイルスベクターキットを購入し、LacZを発現するコントロール用ベクターで水疱性口炎ウイルス(VSV)G蛋白質を纏ったウイルス粒子の作製を何度も試みたが、全く成功しなかった。これは、ウイルスパッケージング用プラスミドをSIGMA社のpMISSION GAG POLに変更することで解決した。この系において、VSV-G蛋白質と1088株G蛋白質についてウイルス粒子産生能を比較したところ、1088株G蛋白質を纏わせた場合では、VSV-G蛋白質の場合に比べて約1000分の1程度しかウイルス産生が認められなかった。培養細胞において、この1088株G蛋白質を纏ったウイルスの感染価は非神経系細胞に比べ神経系細胞で約6倍高く、神経親和性が確認された。我々は1088株G蛋白質へのN型糖鎖の追加(特に第194位)がウイルス増殖性を亢進させることを報告しており、第194位に追加の糖鎖を有する1088株G蛋白質でもウイルス作製を試みたが、野生型に比べて約2倍程度しかウイルス産生量は増加しなかった。以上より、今後は先ず高力価の1088株G蛋白質を纏ったレンチウイルス粒子が得られるように種々の検討を行う必要があると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高力価の1088株G蛋白質を纏ったレンチウイルスベクターを調製することができず、マウスにおいてその知覚神経指向性を検証できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず1088株G蛋白質を纏わせた場合でもVSV由来G蛋白質の場合と同程度のウイルス力価が得られるように検討することを計画している。具体的には、1088株G蛋白質発現のためのプラスミドベクターについて、現行のCMVプロモーターのものからCAGプロモーターのものへ変更することや、G蛋白質の細胞質領域を狂犬病ウイルス実験室株由来やVSV-G蛋白質由来のものに変更することを計画している。 そのうえで、CMVプロモーター制御のGFP遺伝子の下流に疼痛依存的に発現するようにルシフェラーゼ遺伝子を挿入したレンチウイルスベクターゲノムを構築し、これより1088株G蛋白質を纏ったウイルス粒子を調製して、培養細胞神経細胞やマウス等を用いて、慢性疼痛の遺伝子治療用のウイルスベクターとしての有効性について評価を行う。
|
Causes of Carryover |
当初の予定と異なり、動物実験を行うところまでに至ることができなかったため、その分が残額として生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については本年度請求額と合わせて、ウイルスの大量調製、レポーターアッセイや動物実験(in vivoイメージングや病理組織学的解析)等に充てる計画である。
|