2015 Fiscal Year Research-status Report
haptics技術を用いた非閉塞性無精子症に対する精巣内精子回収術の新展開
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15K15588
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
岩本 晃明 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (60046117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 陽子 東亜大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50398963)
吉池 美紀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, その他 (60398964)
大西 公平 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80137984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非閉塞性無精子症 / 顕微鏡下精巣内精子回収術 / 精細管基底膜肥厚 / 精巣硬度 / 停留精巣造精機能障害モデル / haptics技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
非閉塞性無精子症患者から精子を回収する最終的手段は顕微鏡下精巣内精子回収術であるが、その成績は術者間で一定しない。その原因として申請者は精子が存在する精細管(ST)と造精機能障害のあるSTでは硬度が異なるのではとの仮説を立て、今年度は精巣に押し込み力を加えた時に生じる反力と押し込み量の割合である剛性を指標に精巣の硬度測定を行った。 まず硬度測定に使用する実験動物種を検討し大動物であるブタは、精巣サイズは大きいがST径は太くなく、STを単離・穿刺する実験には向かないことが判明し対象から除外した。一方ハムスターはSTを単離しやすく、今後の主たる動物実験として用いることとした。 単離STの硬度の測定には技術的な問題があり、まずは精巣自体の硬度を測定する方針とし、精巣全体をセンサで押し込んだ時の剛性を測定する装置を作製した。白膜つきの精巣と白膜なしの精巣の剛性をこの装置で測定したところ、白膜つきの正常精巣において剛性が10倍程度高いこと、停留精巣(RT)による造精機能障害モデルの精巣では白膜あり/なし両者の精巣で、正常精巣に比較して有意に剛性が低下していた。 剛性を測定した精巣について、病理組織学的変化を観察すると、RT群ではST直径が約4割減少、精細管基底膜(STB)の厚さは約2倍に増加しており、ハムスターでも造精機能障害とST径、STBの厚さに関連性があることが示された。これらの現象に伴って変化するSTBの構成成分を組織化学的に検討したところ、肥厚したSTBは、ヒトと同様にハムスターでもMAAレクチンに親和性を示すがその局在が異なり、またヒトとは異なりPNAレクチンとは親和性を示さなかったことから、異なった糖鎖構造を持つことが推察された。STB構成成分の免疫組織学的検討ではDesmin,α-SMAが基底膜全体に強く発現しており、ヒトとは異なる成分が増加している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅰ.実験モデルの病理組織学的な検討:当初の計画ではブタを使って検討する予定であったが、概要に述べたようにブタ精巣は実験に適していない材料であったため、ハムスターに変更した。ハムスター精巣の薬剤による造精機能障害の誘起については参考文献が乏しく基礎検討も不十分なため、本年度は停留精巣手術による障害モデルを作製し検討を行った。今後は例数を増やすとともに、停留の期間の長さを変更することにより軽度および重度な障害モデルを作製し検討を行う。 Ⅱ.精細管硬度の測定:ハムスターの精細管を単離し、引っ張り試験を行い張力センサによる測定を行ったが、精細管1本にかけられる張力が非常に小さいため、シグナルがモーターの摩擦抵抗より小さく検出不能であった。精巣全体の剛性測定装置の開発では、押込みセンサによる測定を行い良好な結果が得られていることから、今後は精細管硬度の測定に、センサの感度や種類、精細管をホールドする装置にも改良を加え、押し込みセンサによる測定装置を、開発する予定である。 III. 精細管硬度の変化に関わる物質の検討:軽度および重度の造精機能障害を示す精細管に含まれる物質の増減を組織化学的にさらに検討することにより、硬度の変化に結びつく物質の探索を行う予定である。全体としてはやや当初の計画から遅れているが、実験動物や測定装置の変更が上手くいっているため、今後の検討に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の交付申請書に記載した研究計画と動物種、造精機能障害モデル作製方法を変更した。しかし正常精巣と停留精巣術による造精機能障害精巣の硬度間で予備実験段階で有意差が認められていることから今後精巣硬度の測定方法は本方法で行くことにした。 H27年度に行ったハムスターの実験例数ではまだまだ確証を得たというわけには行かず例数を重ねていく予定である。また停留精巣手術による造精機能障害モデルについて術後どの時期に測定するのが良いのかを検討する予定である。その際、組織学的な検討、精巣硬度に影響を及ぼすと思われる精細管基底膜の構成成分についても光学顕微鏡的・免疫組織学的レベルの検討も行う予定である。それらの結果を踏まえ、ハムスター精細管を単離して本研究課題の当初の目的である精細管の硬度を測定する予定で、押し込み試験に使用するセンサの種類も検討して、正常精細管と造精機能障害モデル精細管の硬度を比較し、組織学的検討による裏づけを明らかにする予定である。 従来造精機能障害の指標は精巣サイズ、精液検査から評価してきたが今年度の研究成果による精巣の硬度を直接測定する評価法は新しい知見と思われ症例を増やして明らかにしていきたい。 願わくば精細管を穿刺し精細管内容液に精子が存在するのかどうかを検討したい。
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Causes of Carryover |
今年度動物種の選定に時間を要しました。そして精巣の硬度測定で正常精巣と造精機能障害精巣とで硬度を比較すると後者で硬度が高いとの新知見をえました。H27年度予定の精細管硬度測定のscaling/haptics機能を利用した実験を行うことができなかったためです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年は動物実験を行うスペシャリストを雇い実験を進め,さらにhaptics技術に関わる物品の購入を予定してます.また国際学会にも出席したいと思っています.
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