2015 Fiscal Year Research-status Report
ストレスシグナルは角膜内皮の老化と炎症を制御しえるのか
Project/Area Number |
15K15635
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石倉 涼子 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (00335530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
宮崎 大 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (30346358)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 角膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
角膜内皮は、角膜の透明性の維持に必須であり、特に加齢や種々のストレスにより誘導される角膜内皮の生理的変化や病態を理解することは重要な課題である。そこでまず、どのようなストレスシグナルを内皮細胞が受容しえるのか、さらには、そのシグナルのアウトプットがどのようなものとなるのかを検討した。たとえば、角膜内皮細胞の顕著な損傷につながりえる代表的なものは感染ストレスである。内皮ストレスをおこす代表的な病原体である単純ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスの場合、その主要なアウトプットとして検出されるのは、I型インターフェロンやinterleukin-6 (IL-6)である。そこでこれらの分泌を指標に、ストレス分子群の反応性を検討した。ストレス分子群には、自然免疫系のmediatorとしてToll like receptor ligands、酸化ストレスから生じるadvanced oxidation protein products、細胞死や炎症により放出されるhigh mobility group box-1 (HMGB-1)、炎症関連としてserum amyloid Aを対象としてまずスクリーニングを行った。その結果、内皮細胞の場合、これらのストレスシグナル群は、単独では必ずしも良好な反応性は示すものではなく、複合したシグナルインプットにより良好な応答を示し、かつ、その反応としては、I型インターフェロンあるいはinterleukin-6 (IL-6)に大きく反応形態に分類できることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストレスシグナル経路の概要を探るため、酸化および糖化ストレス産物、アミロイドα(SAA)、アミロイドβ、補体C3a, 熱ショックタンパク、DNA結合タンパクのHigh mobility group box 1(HMGB1)など多岐にわたる分子群を認識する代表的なレセプターであるReceptor for Advanced Glycation End Products (RAGE)に着目し、まずシグナル経路の解析を進めつつある。これまで、RAGEの主要なアウトプットは、MAPKinaseあるいはNF-κBが主要経路と考えられてきたが、内皮細胞で検証した場合、多くのRAGEのリガンドにおいてI型インターフェロンが特徴的に産生されることから、そのシグナル経路の解析をまず試みている。現在、そのシグナル経路はおそらくアダプター分子を介してMYD88経路からインターフェロン誘導にクロストークする可能性がある。このため、内皮におけるインターフェロン誘導の主要シグナル分子であるIRF7の欠損内皮細胞を作成した。これによりさらに詳細な解析を継続する。さらに、これらの経路により内皮細胞障害あるいは老化関連シグナルとの関連をさらに検証をすすめていくことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
角膜内皮細胞が酸化および糖化ストレス産物、アミロイド、DNAなどに応答して一型インターフェロンやinterleukin-6(IL-6)を産生することを明らかにしてきた。しかしながら、これらが直接内皮細胞の老化や障害に関与しているのか、あるいは、獲得免疫系の寄与があるのかはまだ不明である。そこで、炎症を介した老化あるいは障害の可能性を十分検証する必要があると考えている。つまり、獲得免疫系を実際に賦活化しえるのかに関しては、内皮細胞における炎症応答の詳細な解明をまずすすめていく必要があると考えられる。たとえば、獲得免疫系としてCD8+ 細胞障害性Tリンパ球を活性化するためには、一型インターフェロンやinterleukin-12 (IL-12)が重要な役割をはたすことが想定されるが、これらのシグナルが内皮細胞のみにより提供されるかは明らかではない。また、獲得免疫系を活性化するにあたり、Indoleamine 2,3-Dioxygenase 1 (IDO1)などの調節性因子の役割も考慮して解析する必要があるが、ウイルス感染において報告したIDO1の機能がそのまま外挿できるわけではない。内皮細胞の場合、たとえばProgrammed Cell Death 1 Ligand 1(PDL1)といった抑制性分子の寄与も考慮してすすめていく必要があり、引き続きの十分な検証が必要と考えている。
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Causes of Carryover |
購入した試薬が安価に納入できたため次年度に使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度分として、試薬を購入する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Indoleamine 2,3-dioxygenase 1 in corneal endothelial cells limits herpes simplex virus type 1-induced acquired immune response2015
Author(s)
Haruki T, Miyazaki D, Inata K, Sasaki S, Yamamoto Y, Kandori M, Yakura K, Noguchi Y, Touge C, Ishikura R, Touge H, Yamagami S, Inoue Y
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Journal Title
British Journal of Ophthalmology
Volume: 99
Pages: 1435-42
DOI
Peer Reviewed