2015 Fiscal Year Research-status Report
網膜色素上皮細胞の放出する細胞外微粒子による網膜下炎症環境の破綻
Project/Area Number |
15K15638
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
羽室 淳爾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80536095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞外微粒子 / 加齢黄斑変性 / miRNA / マクロファージ / 網膜色素上皮細胞 / 補体系活性化抑制因子 / 炎症増悪回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案課題では、加齢黄斑変性(AMD)の慢性組織炎症病態を、『RPEの細胞機能変性によるRPEとMps系との情報ネットワークの破綻』と捉え、「細胞外微粒子によりMpsやRPEが貪食能の低い細胞に変性変換され、結果、恒常性維持に係る貪食処理が進まず、ドル-ゼン形成に至るとする新しい回路の存在を検証し、萎縮型AMDに係る新しい分子標的を明確化し、創薬基盤技術として新分野の開拓に資する。 初年度27年度においては、①評価すべき貪食能の低下を確認する系をマウスの新鮮Mps細胞、初代RPE細胞系において確立し、続いて、②如何なる変性処理により貪食能が低下するかの陽性対照系を作成し、③引き続き、Mps・RPEの共培養系でどのような相乗作用がみられるかを検定し、MCP-1, IL-6, IL-8, PEDF、VEGFの産生が共培養で著明に増強されること、これに対し、TNFの産生は逆に抑制されることを確認できた。何れも新しい知見で投稿準備中、国際学会発表の段階まで進んだ。 以上のことは、マウスMps細胞株であるRAW264とマウス初代RPEを用いた共培養系でも確認された。RPEの機能の1つに、補体活性化による組織損傷の抑制があるが、本機能がMps共培養により変化するかPCR法で検定した。共培養でクラステリン(Clus)は発現が増加し、補体系活性化抑制因子CD59とCFHは減少した。一方、補体系活性化因子CFH, CFHの発現は、逆に、共に高進した。この結果は、Mpsとの共培養によりRPE機能に病態増悪方向への変化が起こっていることを示す。 本共培養系で培養上清に特異的に発現する細胞外微粒子に含まれるmiRNAの解析を繰り返したが現在の処、miR-6968-5p,miR-3473e,miR-326-5p,miR-3473aが候補となっているが最終確定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①評価すべき貪食能の低下を確認する系をマウスの新鮮Mps細胞、初代RPE細胞系において確立し、共培養上清のRPEへの添加でRPEの貪食能が有意に低下することが確認できた点は研究仮説の正当性をを裏付ける。②しかし、培養上清中の分子種で本貪食能低下に係る本体は未だ明確には出来ていない。次年度の課題である。③Mps・RPEの共培養系において炎症増悪回路に係る因子の産生増強が認められ、血管新生、抑制因子双方の産生が増強されること、TNFの産生は逆に抑制されること、一方、補体活性化因子の産生は増強され、補体活性化抑制因子の産生はClusを除き発現抑制されるとの知見はAMD病態の解釈に極めて重要な発見であり、Mpsとの相互作用により炎症増悪と補体系活性化抑制機構の破綻が同時に起こることを示す。MpsがMCP-1などのケモカインにより脈絡膜下に侵襲することでRPE機能の病態抑制効果が破綻するという変性が起こっていることが明確となった。今後、本破綻を担う分子種の同定と標的分子の解明により新しい創薬標的並びに診断手段が提供できる可能性が高まったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に従い予定通りに進める。 特にMpsとRPEの相互作用によりRPE巣局所の炎症増悪と補体系活性化抑制機構の破綻機構を担う細胞変性誘導因子の同定と同因子の標的分子の解明に傾注する。 ①変性RPE細胞内miR並びに分泌型miRの網羅的検索は27年度に終了しており今後は, エキソゾームの分泌量と細胞変性の関係ならびに分泌されるエキソゾームの種類の同定を実施する。共同研究者のがんセンター研究所落谷先生と連携しExoscreenを用いる。②巣での着手しているRPE変性因子oxLDL, TGFβ/TNFαにより分泌型miR産生機能がどう変化するか最終結論を出す。③機能的に重要なmiRを決定するために、RT-PCRにより発現の再現性を確認後、標準miRを購入し、トランスフェクション法により機能再構築を行うと共に、抗当該miR によりmiR機能を抑制することで確認する。④POS貪食能力の変化との対応: 既に確立しているPOS貪食系で実施する。必要に応じMFG-E8, ITGB5、MERKなどPSの直接、間接の受容体発現の変化を解析する。29年度になると思うが、米国輸入AMD患者眼球検体において特定miR, エキソゾームの分布の検定、特に、補体抑制因子CD46, CD55, CD59, クラステリン陽性エキソゾームの局在検定を実施する。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進展し、予想よりも少ない金額で進展したこと、次年度に分子種の決定など本格的の研究展開に備えて消耗品代を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品;エキソゾーム単離精製試薬 90万,miR機能検定用mimics, antagonist 約70万,細胞培養用試薬 約50万,貪食能検定用培養器、試薬 約50万, 旅費(がんセンター研究所で実験)約20万
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Research Products
(1 results)