2016 Fiscal Year Research-status Report
核磁気共鳴データのパターン認識解析による敗血症関連脳症の予後予測法の開発
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15K15663
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 崇生 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (40328810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 慶子 日本医科大学, 医学部, 助教 (30165162)
小池 薫 京都大学, 医学研究科, 教授 (10267164)
佐藤 格夫 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30409205)
金涌 佳雅 日本医科大学, 医学部, 講師 (80465343)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 敗血症関連脳症 / NMR解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症敗血症はしばしば意識障害を伴う。これは敗血症に伴う臓器障害の 1つと考えられ、敗血症関連脳症と呼ばれる。本脳症は多くの場合、敗血症の改善と共に軽快するが、近年、敗血症治癒後も長期にわたって認知機能等の障害が遷延する例が指摘され、敗血症診療の課題のひとつとして注目されている。しかし、現状ではどのような症例で認知機能障害が遷延するかを予測することは困難である。そのような中、どのような敗血症症例で脳症が遷延化するか、敗血症急性期の段階で予測可能とする臨床検査法の開発が望まれている。 平成28年度は、まず、ラット髄液と脳をNMR計測し解析するための条件を検討した。(1)ラット髄液の検体量は極めて少量であるという特殊性から、NMR計測ならびにその後の多変量解析が適切に遂行できるように、検体の解凍や抽出分離などの前処理工程を検討した。(2)敗血症病態モデルラットから採取したサンプルについて、研究者間で、NMR測定条件などについて慎重に検討し協議を重ねた結果、既定の方針どおり、7テスラ(300 MHz)FT-NMR装置(JEOL)を用いて、測定核種をプロトン(1H)とすることにした。 髄液と脳の検体に関しては、平成27年度にLPS投与(2mg/kg、10mg/kg)ラットから検体を採取し、現在、摂氏-80度で保存しているが、本実験の妥当性と信頼性について、平成28年度にあらためて再検討した。その結果、動物実験は本研究の目的にかなうもので、LPS投与量を変更して再実験を行う必要はないと判断した。さらに、本研究で採取したサンプルのNMR計測値の数値化処理やデータ解析などの計算解析環境は整備し、NMR計測が完了すれば、ただちに解析作業に着手できる態勢が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
動物実験で採取する脳脊髄液が微量かつ特殊であることから、NMR計測の条件設定や計測方法の確立に相応の時間を要した。加えて我々が独自に開発したNMR信号の新規処理方法を、髄液等サンプルに適応させるための検討にも時間を要した。したがって、当初予定していた平成28年度の研究達成については、遅れているものとして評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験で採取した脳脊髄液や脳組織のサンプルのNMR計測を完了させるため、研究期間の延長を計画した。平成29年度においては、平成28年度に実施したNMR計測や解析方法の検討結果に基づき、現在凍結保存中の脳脊髄液と脳組織を解凍し、前者にあっては重水および内部標準物質を加えてNMR試料管に注入し、後者にあっては混合溶媒による遠心抽出した上での試料調製を実施し、次いで、NMR計測として7テスラ(300 MHz)FT-NMR装置(JEOL)を用い、測定核種としてプロトン(1H)について行なうことを優先的に実施する。解析結果は逐次取得できたら、可及的速やかに、NMR計測値の数値化処理を実施し、多変量解析を行なう。研究代表者、あるいは必要に応じて研究分担者は、この結果について検討を重ね、髄液や脳組織で敗血症に伴う変化が検出できるかについて確認、検証する。敗血症モデルラットと対照群ラットの脳脊髄液や脳組織のNMR計測データから、両群を識別することが十分ではないと認められた場合は、その識別能が明確になるように多変量解析モデルをブラッシュアップするか、NMR信号処理の方法の改善を図ることも考慮する。
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Causes of Carryover |
所定の目的が達成されるように、当初の研究計画について再検討を重ねた。そのため、平成28年度はNMR計測・解析についての検討・計画の立案に重点を置き、NMR計測・解析を平成29年度に実施することとした。これに関連する経費を平成29年度に支出する計画となったため、その分の使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
髄液と脳組織サンプル試料分についてのNMR計測・解析費用を支出する。また解析結果の検討が研究代表者と研究分担者あるいは研究分担者間で円滑に実施されるように必要な費用を支出する。また、解析プログラム等の改善に要する経費も必要となる場合も考えられる。
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