2015 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞のオートファジーメカニズム解明による組織再生プロローグ
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15K15680
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
山田 陽一 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (20345903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患などに対する新しいアプローチとして注目されている再生医療においては、とりわけ幹細胞の役割、機能が重要である。また、臨床応用には安定した細胞の増殖、維持、大量培養が必要とされるが、多能性幹細胞はストレスに弱く, 容易に細胞死を起こすこと、不安定性が臨床応用の障害となっており, 細胞生死制御メカニズムの解明が求められている。一方、オートファジーは細胞内大規模分解リサイクルシステムで、細胞生死など細胞の生命維持を司る守護神として極めて重要な機能を果たすことが知られている。我々はこれまでに多能性幹細胞(ES細胞)におけるオートファジーの意義について研究を進め、ATG12 fl/flマウスよりATG12ノックアウトES細胞を単離樹立し、同細胞ではオートファジーが阻害されており、増殖能の低下や細胞死を引き起こしやすいことを示唆してきた。本研究では、幹細胞におけるオートファジーのメカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度は、ストレス下における細胞動態について検討するため、ATG12ノックアウトES細胞およびコントロールのATG12 fl/fl細胞をそれぞれ飢餓状態と通常の培養条件下で培養し、細胞死をIn Situ Cell Death Detection Kit, TMR red (Roche Applied Science)にて検出し、蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、コントロールと比較してATG12ノックアウトES細胞において顕著に細胞死が起こっていることが明らかとなった。また、BrdUによるラベリング(FITC BrdU Flow Kit (Becton Dickinson))を行って細胞増殖について比較したところ、ATG12ノックアウトES細胞において細胞増殖の低下が認められた。また、低酸素環境における細胞動態について同様に検討した結果、ATG12ノックアウトES細胞において細胞死の増加、細胞増殖の低下が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストレス環境下においてオートファジーが阻害されたATG12ノックアウトES細胞では細胞死が引き起こされ、細胞増殖が低下することが明らかとなり、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、University of California San Francisco (UCSF) と共同してES細胞におけるオートファジーの機能解析を進める。ES細胞におけるオートファジーの関係について、低酸素下における影響についても検討する予定である。また、オートファジー機能が阻害されたES細胞では、細胞死が増加し、細胞増殖が低下していることが示唆されたため、その機序にはミトコンドリアが関与している可能性が示唆される。ミトコンドリアは細胞の生死、老化等に関与し、生命活動に不可欠かつ細胞内エネルギー産生を行っていることでも知られる。そこで、ES細胞におけるオートファジーのミトコンドリアへの影響についても検討する。具体的には、ATG12ノックアウトES細胞およびコントロールのATG12 fl/fl細胞のミトコンドリアの形態について、MitoTracker を用いてミトコンドリアを可視化し、蛍光顕微鏡下で観察することとしている。また、低酸素環境下等のストレス環境下においても評価を行い、多能性幹細胞におけるオートファジーの機能、メカニズムについてさらに検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた調査・研究、成果発表のための旅費については、昨今の研究競合状態を考慮し、結果をまとめた後に行うこととしたため、実支出額が支払い請求額を下回り、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究実施計画に従って研究を進め、その成果を今後積極的に国内および国際学会等で発表するために使用する予定である。
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