2015 Fiscal Year Research-status Report
バイオイメージング技術を応用した口腔がん顎骨浸潤モデルマウスの開発
Project/Area Number |
15K15694
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80444496)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨浸潤 / 口腔がん |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔がんの顎骨浸潤メカニズムの解明とその制御のための指針を得ることを目的として、平成27年度はffLuc遺伝子を安定発現する骨浸潤ヒト口腔がん細胞株の樹立を行った。ffLuc遺伝子は改変型GFP遺伝子とルシフェラーゼ遺伝子を融合させることにより蛍光タンパク質と発光タンパク質の利点を併せ持つため、簡便かつ定量性のあるがんの浸潤および増殖測定が可能である。ffLuc遺伝子をpLVSINベクターに組み込み、パッケージングプラスミドとともにLentiX-293T細胞にトランスフェクションし、レンチウィルスを作製した。ffLuc発現レンチウィルスを骨浸潤能を有するヒト口腔がん細胞株、HSC-3細胞およびSAS細胞に感染させたのちピューロマイシンを用いて、ffLuc遺伝子安定発現細胞株を複数樹立した。ffLuc遺伝子の発現量を、蛍光顕微鏡による目視およびレシフェラーゼ活性の測定により行い、ffLuc遺伝子の発現が最も高かった細胞株をHSC3-ffLuc細胞およびSAS-ffLuc細胞としてクローニングした。これらの細胞を2,000,000個/ml生理食塩水になるように調整し、そのうち50μlをヌードマウス左側咬筋内に接種した。腫瘍の増殖はハンディタイプの紫外線照射器によって緑色蛍光の口腔がん細胞の増大を観察できた。約3週間後に通法にしたがってパラフィン切片を作製し組織学的検討を行った結果、SAS-ffLuc細胞を接種したマウス下顎骨および顔面骨に著明な骨浸潤像を認めた。以上の結果より、SAS-ffLuc細胞は口腔がんの骨浸潤を再現する有益な動物実験モデルとして応用可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はffLuc遺伝子を安定発現した口腔がん細胞株の樹立に成功し、またin vivoにおいて骨浸潤能を有していることを確認できた。したがって、当初の目的であるバイオイメージング技術を応用した口腔がん骨浸潤の動物実験モデルを確立できたと考えられ、平成28年度はこのモデルを用いて口腔がんの骨浸潤メカニズム解明を行うことが可能となる。これらの結果より、研究はおおむね順調に進展していると判断した
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に確立した骨浸潤モデルマウスを用いて、①顎骨浸潤の分子メカニズム解明、および②骨浸潤の定量的測定法の樹立を試みる。①に関しては顎骨浸潤部の口腔がん細胞と軟組織浸潤部の口腔がん細胞の遺伝子発現解析を行い、顎骨浸潤に関与する遺伝子の同定を行う。そして、レンチウィルスシステムを用いて同定された遺伝子の過剰発現およびノックダウンを行い骨浸潤における機能的役割の解明を行う。また、同定した遺伝子の骨浸潤部における発現を免疫組織学的に検討するとともに、その発現制御機構の解明も行う。②に関しては、骨破壊の測定とがん細胞増殖の定量的測定を行う。腫瘍増殖は、ルシフェリン投与によるルシフェラーゼ活性を指標に経時的に測定する。骨浸潤に関しては、口腔がん細胞を接種された側の顎骨およびコントロール側の顎骨を用いてマイクロCTによる3次元的形態計測を行い、コントロール側の顎骨骨量を基準に骨破壊量を計測する。また通法にしたがってパラフィン切片を作製し、TRAP染色により破骨細胞の測定、①で同定された遺伝子の発現を免疫組織学的検討により行う。これらがん細胞増殖と骨破壊量を比較し、骨浸潤能の評価を行う。可能であれば、平成27年度に樹立した複数のSAS-ffLuc細胞株およびHSC3-ffLuc細胞株について骨浸潤能を比較・検討し、骨浸潤能の異なる細胞株として樹立する。
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